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ピッチ周波数(モーラ数とモーラ位置)

単語のピッチパターンはアクセント型によらず語頭で上昇したのち語尾に向かっ て下降する成分とアクセントの位置に対応して上昇・下降する成分の和として 近似できる[7].日本語の単語アクセントは「低高高高低」のよ うに各音節ごとの高低で表わされるため,各音節のピッチ周波数は単語のモー ラ数とアクセント型,および音節の単語内における位置で表現できると仮定で きる.したがって$M$ モーラ語であれば理論上 $M+1$ 通りのアクセント型が 存在する.

しかし,合成単語の対象が「地名」「姓名」のような固有名詞の場合,アクセ ント型の出現に偏りがある.実際に 4$\sim$6 モーラの地名を同一話者が発声 した音声から100件ずつランダムに選んで検聴したところ,ほとんどのアクセ ント型は $M-2$ 型,もしくは $0$ 型であった.

さらに,これらの単語音声のピッチ周波数をXwaves+ [9]を用いて 調査した.図1に単一話者が発声した地名 4モーラ語 1,500件 のピッチ周波数の平均値と分散を示す.同様に5モーラ語 2,800件の結果を図 2に,6モーラ語 2,200件の結果を図3に示す.

図: 4モーラ語1,500件の$f_0$の平均と分散
Means and deviation of $f_0$ for 1,500 word (4 mora)

図: 5モーラ語2,800件の$f_0$の平均と分散
Means and deviation of $f_0$ for 2,800 word (5 mora)

図: 6モーラ語2,200件の$f_0$の平均と分散
Means and deviation of $f_0$ for 2,200 word (6 mora)

これらの図において,時間軸はモーラ数で正規化したのち計算した.図中の■ はピッチ周波数の平均値を,縦棒の長さは分散を示している.この結果から, モーラ数が同じ場合,ピッチ周波数の分散は非常に小さく,アクセント型を意 識しなくて良いと考えた.従って,4$\sim$6 モーラの地名の場合には,各音 節のピッチ周波数は単語のモーラ数と音節のモーラ位置で表現できると仮定し た.



平成14年9月3日