全結果における考察とまとめ

今回の実験において過去の研究結果[*]から,「晴れ」「雨」「雪」のような天気に関するものは正解率が約0.8を上回ったため,使い分けが必要な単語組であると思われる反面,「春」「夏」「秋」「冬」のような単語では正解率は約0.5と,無作為に単語を挿入した場合よりは高いものの実験したものの中では低く,使い分けがあまり必要ではない単語であるとわかった.

また「東」と「西」や「上」と「下」のようにお互いが対となるような単語が単語組内に存在する場合,「事実上」や「水面下」,「晴れ舞台」のように該当単語が慣用句として使用される場合,「火」[*]や「月」[*]などで述べたように曜日や短縮形を括弧などで示す場合,正規化 1#1値が約0.8と高くなる傾向があることがわかった.

今回の実験で得られた素性として,「上」「下」「左」「右」などにおいて,「事実上」や「水面下」というような使われ方が存在するが,「事実」や「水面」のような使われ方はしないことから,物体における「上」や「下」という一般的に予想される意味だけではなく,文中での使われ方に大きな差がある単語も存在するということを知見として得ることができた.

他にも「秋」の素性として「疑惑」や「問題」,「中学」の素性として「いじめ」や「興味」,「夕」の素性として「帰国」や「正式」など,元の単語からは連想されにくい単語や,南の素性として「スーダン」,「鶏肉」の素性として「マクドナルド」,赤の素性として「赤新月」など,実験に用いた新聞記事によって初めて知り得た興味深い単語や時事も存在したので,本研究は非常に有益なものであったと考えられる.