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TDSMTの利点

TDSMTは翻訳の手順を詳しく解析することが可能である.TDSMTでは,翻訳に利用した対訳文,変換テーブルを調べることが可能である.また,利用された変換テーブルの作成に使用した対訳文,対訳単語も調べることが可能である.このように,TDSMTは確率計算以外のほぼすべての翻訳手順が明示されている手法である.このため,翻訳の誤りの追求が可能となる.つまり,改善点の探索が非常に容易である.

一方,現在主流となっているニューラル機械翻訳やMosesなどの句に基づく統計翻訳では,このような詳しい解析は困難である.これらの手法は統計的な計算を中心とした手法である.計算結果は示されるが,どの情報が翻訳結果に影響したのか調べることは困難である.データベースの追加以外の方法で統計的な確率を中心とした手法を発展させるのは困難である.

現在行われているニューラル機械翻訳に関する研究では,複数のニューラル機械翻訳の手法から性能の高いモジュールを取り出し,組み合わせるような研究が多い.つまり,実際の翻訳結果を解析し,誤りに基づいた改善を目指す研究は少ない.

TDSMTでは誤りに基づいた改善が行えるため,確実な翻訳精度の向上が期待できる.今回出力されたカバー率や,翻訳精度は発展途上の結果である.改善をすすめることで十分な翻訳性能を持つ手法になり得ることがTDSMTの利点である.



Hiroto Yasuba 2019-05-08