第1の成果として,動詞22対,形容詞10対の類義語対を用いた実験において, 類義語のうち最も頻度の高い語を常に選択するベースライン手法の正解率が動詞では0.77,形容詞では0.70 であるのに対して, 機械学習を用いる提案手法は動詞では0.88,形容詞では0.81の正解率であった. これにより,今回提案した手法自体が動詞・形容詞の類義語の使い分けに対して有用であると考えられる.
第2の成果として,機械学習での性能に基づき動詞・形容詞の類義語対を使い分けが必要なものとそれほど必要でないものに分類した. 今回の実験で再現率高に分類したものは特に使い分けが必要であると考えられる. 特に使い分けが必要とされた類義語対に「探し回る」と「探し求める」や「近しい」と「むつまじい」の対があり,使い分けが必要でない類義語対に「はみ出す」と「はみ出る」や「気まずい」と「面はゆい」の対があった. また,いくつかの動詞・形容詞の類義語対について実際に素性を分析した. 使い分けに役立つ情報を明らかにし,さらにどのような場合に使い分けの必要があるかを明らかにすることができた. 例えば「探し回る」と「探し求める」という類義語対では, 「探し回る」は「時間」「日」といった短い時間を表す場合に用いられることが多いが,「長年」「旅」とといった長い時間を表す場合には「探し求める」が用いられる.また,「あちこち探し回る」とは表現するが,「あちこち探し求める」とは普通表現しない.
使い分けが必要とされた類義語対は文中に出現する名詞によって使い分けの判断ができるものが多く,使い分けが必要でない類義語対は互いに置き換えられるものや,片方が一般的であることが多かった.