各レベルの論文の一部を図4.1から図4.10に示す.
図4.1の論文では, 「目的とする」といった表現があり, 誰が読んでも容易に目的が理解できる論文であることが分かる. また, 目的の記述パターンとして「〜を目的とする」「〜を目標にして〜」「〜のために〜を行う」といった表現が多く見られた.
図4.2の論文では, 問題点の記述のすぐあとに「そこで本稿では〜を行う」といった表現が書かれており, 文脈から問題点解消が目的であることが理解できる. 問題点のあとに「そこで」などの表現を使うことにより, 考えなくても直感的に目的が理解できる.
図4.3の論文では, 問題点が記述のすぐあとや「そこで」などの表現がないため, 論理的に考える必要がある. 文脈だけでなく内容を把握し考えることで論理的に目的が理解できる.
図4.4の論文では, 研究を行う背景(問題点)が見当たらないが, 研究の有効性が書かれていることが分かる. 深い洞察をしなければ, 目的が理解できない論文である.
図4.5の論文では, 手法のみ書かれており, 目的が理解できない論文である. 問題点などについても言及しておらず, 何のためにその手法で研究を行うのかが理解できない.
図4.6の論文では, 「以下に挙げる2つの問題点がある」という表現で研究の問題点を指していることが分かる.
図4.7の論文では, 「困難であった」「〜は扱われていない」といった表現で直接的ではないが問題点について記述していることが分かる.
図4.8の論文では, 「出所が不確かな情報」や「不利益をもたらす情報」といったマイナスの表現を使って問題点を間接的に表現していることが分かる.
図4.9の論文では, 「新聞コーパスから用例を採集する研究も多く行われるようになってきている」という部分が背景に当たると考えられるが, 「研究が多く行われるようになってきている」が問題点に繋がるのは少し考えにくいため, レベル2としている.
図4.10の論文は, 記載必要項目「問題点」について全く理解できなかった論文である. 論文のどの箇所を見ても記載必要項目「問題点」に当たる部分やヒントがなく, レベル1に分類した.