#25と#30は,いずれも一致件数が増加せず, 第7.1.4節の誤り分析結果において,本手法で使用する判断条件の種類不足による誤りとなった. そのうちの#30に対して,分析を行う.
(対称な情緒属性の追加により一致件数が増加しない例)
入力文:太郎がヒグマに遭遇する
情緒主と関連事物との関係:乖離(太郎にとってヒグマは会いたくないもの)
情緒主と関連事物との関係が「乖離」であるため,「対人関係・近(太郎,ヒグマ)」は偽であり, 「対人関係・離(太郎,ヒグマ)」は真であるので, 計算機は《嫌だ》を出力する.
作成者の人数が最も多い《恐れ》を正解情緒と設定し,考察を行う. 「ヒグマ」は,日本に生息する陸棲哺乳類でも最大の種であり, 肉食の傾向が大きく,まれに人を食することもある. 情緒主がヒグマを自身に危害を与える可能性がある存在であると考えたため,会いたくない関係であり, 《恐れ》を発生させると作成者が考えたと予想される. 計算機に《恐れ》を出力させるためには,情緒主にとって関連事物が危害を与える可能性をもつという意味をもつ判断条件が必要である. 本辞書で使用する判断条件は「接近」と「乖離」の関係は扱うことができるが, 情緒主にとって関連事物が危害を与える可能性を持つものであることを扱うことは不可能である. 以上から,本手法で使用する判断条件の種類不足による誤りであるとする. #25に対しても,同様に判断条件の種類不足による誤りであるとする.