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次へ: 謝辞 上へ: paper 戻る: 分類8 日本語語彙大系の網羅性   目次

おわりに

本研究では,大局的に能動パターンから変換規則による受動パターンの作成を行い, 受動パターンの網羅性を検証した.具体的には,日本語語彙大系の結合価パターンを9 つの変換規則に従い,格助詞を変形し,受動文の格助詞に対応する受動パターンを 11,310件作成した.このパターンを用いて,寺村の受動態の考察に基づいた規則 が適用されているかを確認したところ,変換規則において助詞の不足という問題 があった.そこで,変換規則に改良を行い,大局的に受動パターンを作成し直し た.

評価実験において,受動文パターンの網羅性と正確性を検証するため,学習辞書 などで使用された単文の受動文に対して受動パターンでの意味解析を行った. その結果,受動文100文に対する受動パターンのカバー率は56%であった. また,誤り事例の分析により,作成したパターンに動作主,対象物,あるいは手 段を表すための多様な格助詞を網羅するための助詞が,改良した変換規則におい ても不足していることがわかった.同時に,助詞による文の曖昧性が存在する場 合,任意格となる格要素の追加や,格助詞の示す意味を正確に捉えたパター ンの追加が必要となることがわかった.

今後の課題は,大局的に作成した受動パターンに対し,局所的に動詞ごとの差異を 吸収するための修正を行うことである.



平成22年2月11日