さて,まずは,情緒推定のために参照する文数を考えてみよう.1文から得られる情報は少ない.たとえば,「うん。」という文だけで は話し手の情緒が推定しがたい.2文からは明らかに情報が増える.たとえば,「遊びに行こう!」という相手からの要求に「うん。」 と答えた場合は,この話し手に,《喜び》や《期待》が生じていると推定しても良いだろう.ゆえに相手との発話の対に注目する必要 がある.一方,「うん。でも、外は寒いよ。」と,話し手が2文で答えたとすると,加えて,《嫌だ》という情緒も可能性がある. ゆえに話し手の複数の発話文にも注目する必要がある.
次に,文からの情報の種類を考えてみよう.たとえば,「遊び」には,陽気なイメージがある.「遊びに行こう!」-「うん。」では, 対話理解を通じて心的状態が生じている.「でも」には逆接的な意味がある.