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動詞慣用句

提案方法は,「手に入れる」や「気になる」といった動詞慣用句に対応していない.動詞慣用句は「名詞」+「助動詞」+「動詞」の組合せが最も多い.以下に例を示す.


例1
手に入れる
手 名詞,一般,手
に 助詞,格助詞,一般,に
入れる 動詞,自立,一段,基本形,入れる
例2
気 名詞,一般,気
に 助詞,格助詞,一般,に
なる 動詞,自立,五段・ラ行,基本形,なる
例3
骨が折れる 骨 名詞,一般,骨
が 助詞,格助詞,一般,が
折れる 動詞,自立,一段,基本形,折れる

この場合,「名詞」+「助詞」+「動詞」の動詞慣用句の一部である「動詞」だけが提案方法で動詞と認識され,主語の後ろに移動する.例を以下に示す.
例1  
元の文 彼 は 本 を 手 に 入れる 。
成功例 彼 は 手 に 入れる 本 を 。
失敗例 彼 は 入れる 本 を 手 に 。
対訳文 He get a book .
例2  
元の文 彼 は テスト が 気 に なる 。
成功例 彼 は 気 に なる テスト が 。
失敗例 彼 は なる テスト が 気 に 。
対訳文 He is concerned about the test .


例3  
元の文 私 は 彼 を 説得 する の に 骨 が 折れ た 。
成功例 私 は 骨 が 折れ た 彼 を 説得 する の に 。
失敗例 私 は 折れ た 彼 を 説得 する の に 骨 が 。
対訳文 I had a hard time persuading him .

失敗例の場合,「なる」と「気 に」が離れているため,フレーズテーブルを作成する際,成功例では,「手 に 入れる」は「get」に,「気 に なる」は「is concerned about」と対訳が割り当てられる.しかし,失敗例では,「入れる 本 を 手 に」で「get a book」,「なる テスト が 気 に」と対訳が割り当てられる.「入れる 本 を 手 に」や「なる テスト が 気 に」を含む文はほぼ無いため,例えば,「私 は なる 彼 の こと が 気 に 。」の文があった場合,「I have made him about the matter .」と誤訳される原因となる.

また,動詞慣用句の中には,二つの意味を持つ慣用句が存在する.例えば,「骨を折る」は「文字どおりの意味」と「苦労する」意味の曖昧性がある場合,文章によっては意味を把握することが困難である.動詞慣用句であるか否か判断するためには,動詞慣用句の辞書を作成し,それを用いる必要があると考える.または,意味の曖昧性をなくすために,「骨を折る」のような動詞慣用句を「苦労する」といった「名詞+する」形式の動詞に置き換える必要があると考える.


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平成21年3月19日