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分析の結果

語義分析の結果,情緒に関する属性を有する接続表現は109件となった.内訳 を表4.1に示す.そして,結果の一覧を表4.2に示す.


表 4.1: 語義分析による属性の内訳
属性 件数
保持 43
保持または反転 5
反転 34
共起 27
関連なし 69
178

情緒属性を判断するにあたって,多くの接続表現で判断基準としたものを以下 に示す.

逆接の接続表現に対して「反転」

那須川ら[5]では「けど」「のに」「しかし」「が」の前後で情 緒の極性が変わることを示唆している.これらは全て逆接の接続 詞である.本研究では,逆接の接続表現では情緒が反転すると判 断して,支障のないことを確認した.
逆接の例
大学を合格したのに褒めてもらえなかった

因果関係や仮定,例示の接続表現に対して「保持」

接続表現「ので」や接続表現「から」は因果関係を示す接続表現である.接続 表現「たら」や接続表現「ば」は「バイクが当たったら嬉しい」のように仮定 に関する接続表現である.これらの接続表現は,後節に情緒表現が存在した場 合,前節にはその情緒を生起させた原因が表現されると想像できる.よって, 仮定・条件・原因・理由の接続表現には情緒属性として保持があると判断して, 支障のないことを確認した.
因果関係の例
バイクが当たったので嬉しい
仮定の例
バイクが当たったら嬉しい
また,接続表現「かとおもうほど」や接続 表現「くらいだから」は,「死ぬかとおもうほど疲れた」のように,例示の 接続表現である.前節は,後節の事態の比喩が描かれると想像できる.よって, 例示の接続表現には情緒属性として保持があると判断して,支障のないことを 確認した.
例示の例
死ぬかと思うほど疲れた

目標や願望の表現に対して共起(《Positive》)

接続表現「ために」や接続表現「たいばかりに」の前節には目標や願望の表現 が存在すると辞典[6]に記載されている.本来,目標や願望は書き手に とって期待する事態を設定するものであるから,目標や願望の表現から 《Positive》な情緒が推定できると判断して,支障のないことを確認した.
目標・願望の例
お金持ちになるために節約に励む

比例・反比例の接続表現に対して「保持」または「反転」

接続表現「につれて」や接続表現「るにしたがって」は比例や反比例を示す接続表 現である.よって,比例の用法であれば保持し,反比例の用法であれば反転す ると判断して,支障のないことを確認した.
比例の例
病気が悪化するにつれて生きていくのが嫌になってくる.
反比例の例
子供が成長するにつれて教育費が家計を圧迫する

時間的関係の接続表現に対して「関連なし」

接続表現「あいだに」や接続表現「るやいなや」は期間や事態の同時性を示す 接続表現である.これらのように時間に関する接続表現は前節と後節の事態の 時間的関係は示すものの,必ずしも情緒的な関係を示すとはいえない.このた め,時間的関係を表す接続表現には情緒的な属性がないと判断して,支障のな いことを確認した.
時間的関係の例
テレビゲームの電源を入れるやいなや親が帰ってきた.


表 4.2: 語義分析の結果
通し番号 接続表現 属性 通し番号 接続表現 属性
1 うちが 保持 45 につれて 反転または保持
2 かとおもうほど 保持 46 にともなって 反転または保持
3 かとなれば 保持 47 ほど 反転または保持
4 から 保持 48 るにしたがって 反転または保持
5 からには 保持 49 いっぽう 反転
6 がゆえ 保持 50 かというと 反転
7 くらいだから 保持 51 かとおもえば 反転
8 ことだし 保持 52 かとおもったら 反転
9 保持 53 からこそ 反転
10 (そう)だとしたら 保持 54 からって 反転
11 たなら 保持 55 からといって 反転
12 たら 保持 56 からとて 反転
13 だけになおさら 保持 57 かわりに 反転
14 って 保持 58 反転
15 保持 59 けど 反転
16 保持 60 けれど 反転
17 というのは 保持 61 たって 反転
18 というより 保持 62 たところが 反転
19 ところをみると 保持 63 たところで 反転
20 としたら 保持 64 だけにかえって 反転
21 とすると 保持 65 つつも 反転
22 とすれば 保持 66 としても 反転
23 となったら 保持 67 とはいうものの 反転
24 となると 保持 68 とはいえ 反転
25 となれば 保持 69 どころか 反転
26 とは 保持 70 ながら 反転
27 ないで 保持 71 ながらに 反転
28 ないようでは 保持 72 ながらも 反転
29 なくて 保持 73 にしては 反転
30 なら(ば) 保持 74 にしても 反転
31 なんて 保持 75 にしろ 反転
32 (の)なら 保持 76 にせよ 反転
33 のだから 保持 77 にもかかわらず 反転
34 ので 保持 78 のに 反転
35 のなんのって 保持 79 のにたいして 反転
36 保持 80 はんめん 反転
37 ばあい 保持 81 ようとも 反転
38 ほうがよほど 保持 82 より(も)むしろ 反転
39 みたいに 保持 83 あげく 共起・前《P》
40 ものだから 保持 84 あげくのはにて(は) 共起・前《P》
41 ようものなら 保持 85 あまり(に) 共起・後《N》
42 より(も) 保持 86 おかげで 共起・後《P》
43 るようでは 保持 87 くせして 共起・後《N》
44 におうじて 反転または保持 88 くせに 共起・後《N》


89 くらいなら 共起・前《N》 134 おりから 関連なし
90 すればいいものを 共起・後《N》 135 おり(に) 関連なし
91 せいで 共起・後《N》 136 さい 関連なし
92 たいだけ 共起・前《P》 137 たとき 関連なし
93 たいばかりに 共起・前《P》 138 にさいして 関連なし
94 ため 共起・前《P》 139 といっても 関連なし
95 ために 共起・前《P》 140 ことなしに 関連なし
96 てでも 共起・後《P》 141 たうえで 関連なし
97 ては 共起・後《N》 142 ることには 関連なし
98 ないと 共起・後《N》 143 るところによると 関連なし
99 ないよう(に) 共起・前《N》 144 るところによれば 関連なし
100 なくては 共起・後《N》 145 というと 関連なし
101 にいたっては 共起・前,後《N》 146 あと 関連なし
102 にむけて 共起・前《P》 147 いご 関連なし
103 のなんのと 共起・前《N》 148 いぜん 関連なし
104 ばかりに 共起・後《N》 149 にさきだって 関連なし
105 ものなら 共起・前《P》 150 るまえに 関連なし
106 るぐらいならむしろ 共起・前《N》 151 かどうか 関連なし
107 るには 共起・前《P》 152 るいっぽうで 関連なし
108 るよう(に) 共起・前《P》 153 るやいなや 関連なし
109 んがため 共起・前《P》 154 がはやいか 関連なし
110 あいだ 関連なし 155 とすぐ 関連なし
111 あいだに 関連なし 156 かたわら 関連なし
112 うちは 関連なし 157 かとおもうと 関連なし
113 るうちに 関連なし 158 せつな 関連なし
114 ないうちに 関連なし 159 つつ 関連なし
115 ぬまに 関連なし 160 とき 関連なし
116 まで 関連なし 161 とどうじに 関連なし
117 までに 関連なし 162 にいたって 関連なし
118 てみたら 関連なし 163 にいたっても 関連なし
119 てみると 関連なし 164 とちゅうで 関連なし
120 につけ 関連なし 165 ないかぎり 関連なし
121 いらい 関連なし 166 るかぎり 関連なし
122 てから 関連なし 167 にあっては 関連なし
123 るなり 関連なし 168 うえ(に) 関連なし
124 まま(で) 関連なし 169 おまけに 関連なし
125 からか 関連なし 170 し,それに 関連なし
126 せいか 関連なし 171 ことなく 関連なし
127 のか 関連なし 172 たなり 関連なし
128 といって 関連なし 173 ようったって 関連なし
129 とかで 関連なし 174 いがい 関連なし
130 わけだから 関連なし 175 ばあいをのぞいて 関連なし
131 るところまで 関連なし 176 やらなにやら 関連なし
132 きり 関連なし 177 といえば 関連なし
133 るだけは 関連なし 178 ときに 関連なし


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Nakamiti 平成22年2月13日