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概要

現在,広く用いられている要素合成法による日英機械翻訳方式は,統語構造と意 味を分離して翻訳をするため,原文の意味が失われる点に問題がある.この問題 は,要素合成法において重文・複文の良質な翻訳を困難にしている. この問題を解決するため,等価的類推思考の原理に基づく,パターン翻訳方式が 提案された. この方式では,文型パターンを用いることで,統語構造と意味を一体化した処理が 可能である.そして最近,この方式を具現化した日英パターン翻訳システム 「ITM」が試作された.

本研究では,重文・複文を翻訳した際の良質な翻訳文として意訳に注目し,ITM の意訳効果を評価する.なお,ITMに用いる文型パターンは単語,句,節の3レ ベル中の単語レベルを用いて評価を行う.

ここで,意訳とは,日本語文での節数よりも,翻訳後の英文の節数が少なく, かつ,正しい英文である.意訳効果は,手動による評価において,日英文の意 味的な対応関係の正否および英文法上の正誤によって判断する. 参考として,一般の翻訳システム3種類についても評価を行う.

評価はクローズドテスト,クロスバリデーションを実施し,それぞれについて意 訳の望まれる場合の翻訳性能を明らかにする. 翻訳に用いる重文・複文は日本語表現意味辞書より,対訳英文が意訳となってい る日本語文135文を手動評価の対象とする. 各システムによる訳出文を,意訳が望まれる文について分類し,ITMの翻訳性能 を明らかにする.その際,各システムの翻訳結果との比較を考察する.

結果より,ITMは意訳が望まれる場合,翻訳成功時にはクローズドテストで99%, クロスバリデーションで57%と,一般の翻訳システムよりも高い割合で意訳文が 出力できたため,ITMは意訳文の訳出において有効であることが示された.

今後は,句・節レベル文型パターンを用いることにより,単語レベル文型パター ンでは処理できなかった問題を解決をする.



平成19年3月12日