文または文章が, 《A》がベースラインより高く《P》がベースラインより低いパターンに 適合した文を1文でも含む場合に,「きつい」と判断した. よって,書き手が「きつい口調」で書いたにも関わらず 「きつくない」と判断された直接の原因は,そういったパターンに 適合する文を含まないことであるが, 書き手が「きつい口調」として書いたにも関わらず, 何故そういった文を含まないのかを分析する.
「きつい口調」で書かれたが「きつくない」と判定された文または文章は, 以下の4つのケースが考えられる.
「きつい口調」で書かれたが「きつくない」と判定された文または文章の 内訳を表44に示す.
以下に具体例を示す.
今週の土曜日暇でしょ?
白兎海岸に行こうよ。 (勧誘文) |
人手による評価において, 2名が「やわらかい」,1名が「中立」,1名が「きつい」と回答した.
今週の土曜日、白兎海岸に海水浴に行くから、予定空けといて。
(勧誘文) |
適合パターン【CLV^
といて。】の情緒成分は,
《P》:100%,《N》:0%,《A》:0%,《S》:0%,《なし》:0%であるが,
直感的にはもっと《A》成分が強くてもいいように思える.
コーパスにおけるこのパターンの件数は3件であり,
情緒成分の信頼性が決して高くはないと考えられる.
アホか。
落書きした時点でもう十二分に犯罪や。 この処置はしかるべき処置やね。 (批判文) |
相手を「アホ」と言っているため, 文末表現に関わらずきつい印象を与えると考えられる. なお,1文目は【CLNか。】というパターンに適合しており, その情緒成分は《P》:46%,《N》:23%,《A》:8%, 《S》:15%,《なし》:8%であるが, この情緒成分に疑わしい点は見当たらない.
ありえない。
罰金は絶対必要に決まってる。 お前、脳みそ腐ってんのかよ。 (批判文) |
3文目の文末表現「〜てんのかよ。」は,
それ自体がきつい表現(《A》が強く《P》が弱い)と考えられるが,
適合パターン【CLV^
てんのかよ。】が存在しない.
なお,この文章は「お前」などの表現から, Case 3の特徴も持っていると言えるが, 「〜てんのかよ。」が特にきつさの原因として強いと感じたため, Case 4と判断した.