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客体的表現とゼロ代名詞に関する考察

実験に使用した日記コーパスは,日記を書いた話者の視点から書かれており,情 緒主=話者である,という前提の元での情緒主の省略が多い.

これに対して,作成した情緒属性付き結合価パターン辞書は「$ N1$$ N2$を愛好 する」のような客体的表現の中での関係(情緒主:$ N1$,情緒対象:$ N2$,情緒 名:《好ましい》)を重視して情緒タグ付与を行ったため,主格や目的格が省略 された文に対する情緒推定には問題がある.

例として,「$ N1$$ N2$が厭だ」というパターンの場合を考える.辞書化は,「情 緒主$ N1$は情緒対象$ N2$のことが《嫌だ》」という考えで行われる.

しかし,日記コーパス中にはこのパターンに適合する「$ N1$は厭だ」という節が 見られる.この節は情緒主が省略された形で,「情緒主=話者は情緒対象$ N1$が 《嫌だ》」という文である.例に上げた結合価パターンでは,「は格」が情緒主 として定義されているが,情緒主の省略された文では,「は格」が情緒対象となっ ている.このように,「は格」,「が格」などの定義が,格要素の省略によって 違ってくるため,正確に情緒対象を捉えることができない.



平成19年3月12日