従来, パターンを用いた翻訳を行う際, 使用する文型パターンの統語的構造に着目した手 法が多く, 文構造に問題は無いものの,利用者の意図しない出力が現れる問題が ある.又,パターンを用いた翻訳の分野では意味を対象とした検索方法が未解明である.
ところで,日英機械翻訳の分野では大規模な日英文型パターン辞書が作成さ れている.この辞書は,「類推原理」による「意味的等価変換方式」に基づい て,非線形な言語表現構造に対する文型パターンを意味的に類型化したもので ある.日英の原文と単語レベル,句レベル,節レベルの文型パターンと真理項が 収録されている.真理項は,統語的分類と意味的分類に大別できる.統語的分類 には,文種別,統語構造第1分類,統語構造第2分類,第1節間キーワード,第 2節間キーワードがあり, 意味的分類には,第1節間の意味,第2節間の意味,第1従属節の意味,第2従 属節の意味,主節の意味がある.
しかし,研究の時点では,これらの真理項に対し情報付与が完了しているものは,統語 構造第2分類,第1節間キーワード,第1節間の意味,第1従属節の意味,主節 の意味である.そこで本稿では,統語構造第2分類を統語構造,第1節間キーワー ドおよび第1節間の意味を,節間のキーワードおよび節間の意味分類,第1従属 節の意味を従属節の意味と略称する.
そこで本研究では,現時点で情報付与が完了している真理項を用いた英文パター ン検索実験を行い,意味的に適切な英文パターンを出力するための最適な真理項 の検索条件について調査する.
重文、複文合わせて20文の入力文に対して、1000件の英文パターンの検索の結果, 重文では統語構造の真理項の影響が弱く,複文では従属節の影響が強いことが判った. 又,最適な検索条件は全ての真理項を検索条件とした場合であり,結果はカバー 率R1は80%,正解率P2は80から100%であることが示された.
本稿は以下の章で構成されている. 2章では本研究の目的,3章 では,研究手順の概略,4章では研究に利用した対象,5章では評価方法,6章では 実験結果,7章では複数の真理項の組み合わせ実験,8章では考察と今後の課題,9章で 結論,10章では本研究に対しての感想を述べる. 又,付録には本研究で検索した 英文パターン1000件と,真理項の説明を記載する.