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本研究で行った実験方法を説明する。男性被験者12名に実験の主旨を説明した後,
次に被験者を半分の6名ずつに分割した。そして,一方にはそのまま音声対話シ
ステムを利用してもらい,もう一方にはインストラクションのガイドを行った後,
同様に音声対話システムを利用してもらった。計算機との会話であることを意識
してもらうため,マシンを操作している人間の姿は見えないようにした。また,
実験中の質問は認めず,計算機との対話という環境設定を徹底して行った。対話
の様子をビデオに録画し,対話データを収集した。ユーザの平均発話数は約16回,
平均対話時間は約4分30秒であった。対話文の例を図6に示す。図中のSはシステ
ムの発話を示し,Uはユーザの発話を示す。
収集した対話データを発話単語種類,発話文種類,単語エントロピーを用いて比
較した。尚,注文の歌手名,曲名の固有名詞はユーザによって異なって当然であり,
本研究で問題とする発話のばらつきには相当しないため,それぞれを固有名詞歌
手名,固有名詞曲名と統合して扱った。用いた単語エントロピーの計算式を下
に示す。
次に,比較した実験結果を表1に示す。
Table 1:
インストラクションの有無による比較
インストラクション |
有り |
無し |
出現単語総数 |
141 |
164 |
出現単語種類数 |
17種 |
62種 |
出現文総数 |
104 |
82 |
出現文種類数 |
18種 |
34種 |
単語エントロピー |
3.28 |
5.13 |
表1に示されるように,出現単語総数,出現文総数は共にインストラクションの
有り,無しでそれほど大きな違いは無いが,インストラクションを与えることで
出現単語種類は約1/3に減少し,出現文種類は約1/2に減少している。そして,単
語エントロピーは1.85ビットの減少が見られる。次に出現分布での比較を図7に
示す。
Figure 7:
インストラクションの有無による出現分布の違い
|
図7から,インストラクションを与えなかった場合,頻度1の単語や文が多く発
生しており,発散の傾向が見られる。逆に,インストラクションを与えた場合
は,頻度1のものがあまり発生せず,単語と文の大部分が上位に分布している。
これらの結果から,インストラクションの十分な制約効果が認められる。
2001-03-22