そこで本研究では,「形容詞+名詞」を含む文を,日本語と英語の対応関係から
以下に示すように分類する.分類の対象としてアンカー和英辞典46108文中より,
「形容詞+名詞」という表現を含む1054文を使用した.以下にそれぞれの分類の
例を示す.
(1)形容詞と名詞それぞれに英語訳語が対応(680文)
例1:選手たちは全員青いユニフォームを着ていた
The players all wore blue uniforms.
例2:審査員は胸に赤いリボンをつけていた
The judges wore red ribbons on their
chests.
例3:サボテンは厳しい環境に生きている
Cactuses survive in a harsh
environment.
(2)形容詞と名詞の組に対して英語訳語が対応(141文)
例1:あいつはまだ青臭い男だよ
That guy's still green.
例2:赤い絵の具を貸して
Lend me your red.
例3:その本は長い間発禁になっていた
The book had been banned for a long time.
(3)形容詞と名詞の前後を含む表現に英語訳語が対応(165文)
例1:少女は赤い着物を着た人形を抱いていた
The girl carried a doll in red in her
arms.
例2:この部屋は狭くて息苦しい感じがする
This room looks oppressively small to me.
例3:その子供は両親からひどい扱いを受けた
The child was abused by his parents.
(4)慣用表現(28文)
例1:痛い目に合う
suffer
have a bitter experience
例2:黄色い声を上げる
scream in excitement
例3:うまい汁を吸う
get the great profits
(5)文全体で意訳(40文)
例1:セールスマンはうまい言葉で学生を釣って英
会話のカセットテープを買わせた
The salesman talked the student into
buying cassette tapes for English practice.
例2:家内はかゆいところに手が届くようによく
世話をしてくれます
My wife waits on me hand and foot.
なお,アンカー和英辞典より標本を抽出する際に名詞に接頭辞,接尾辞が付いて
いる文や名詞が複合名詞となっている文などは形態素解析が失敗するので対象外
とした.以下に例を示す.
例1:熱いお茶を吹いてさました
I blew on the hot tea to cool it.(対訳例)
茶(858,2352,696,675)
お茶
(23043,-29945,-29946,-18430,-26362)
例文1では,形態素解析時に付与される意味属性番号と一般名詞意味属性体系に載っ
ている意味属性番号が異なるため,ルールが適用できない.
例2:松本は美しい自然環境にある
Matumoto has beautiful natural surroundings.(対訳例)
自然
2535
環境
2665,2655,2511,2509
例文2では,自然環境が単語として登録されていないため,二つの単語として形 態素解析されるので,ルールが適用できない.
【一般名詞意味属性体系】
本研究において使用する意味属性は,概念化された対象と単語との対応関係を, 対象の見方,捉え方に着目して整理分類されたもので,意味属性体系は図1のよ うに12段(属性数 約2,700)の木構造になっている.また,上位の属性は回の属性 を内包するという性質を持っている.