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考察

3章の実験結果より,対訳と一致したのは57.4%であり,正解といえるのは約63 %であった。

評価が×となった文には, 時詞を含む場合,地名を含む場合が多数あった。以下に評価が×となった例を示す。

(1)時詞を含む表現(12文)

例 : あしたの今ごろ

tommorow this time(規則) / this time tomorrow(対訳)

先週の今日

last week today(規則) / a week ago today(対訳)

地名を含む表現(11文)

例 : 日本の学会

Japanese academic world(規則) / the academic world of Japan(対訳)

エデンの園

Garden in Eden(規則) / Garden of Eden(対訳)

飲み屋の付け

bill of the bar(規則) / bill at the bar(対訳) 時詞や場所を表す名詞を含む名詞句では,英語において 特有の表現が存在する場合が多く,本研究では一般則について考えたため,特有の表現に対しては規則が間違いとなった。そこで特有の表現 をする場合の規則を作成することで正解率の向上が可能であると考えられる。


(2)比喩表現(2文)

例 : 日本のゴッホ

Japanese van Gogh(規則) / van Gogh of Japan(対訳)

翻訳規則では国名を含んだ表現はほとんどが「A(形容詞)+B」の形式となるため 評価が×となった。比喩表現についての規則を追加する必要がある。


(3)人,人間,姿を含む表現(3文)

例 : 人の恨み

human grudge(規則) / grudge(対訳)

例 : 先生の姿

teacher's figure(規則) / teacher(対訳)

英語において「人の心」や「人の気持」などの表現は多くの場 合「人」の部分は 省略された表現となる。しかし本研究の規則ではAの名詞が人,人間であればほ とんどの場合において「human + B」となり英語では使われない表現となる。また「Aの姿」となる表現もまた「姿」の部分が省略される場合が多い。そ のため評価が×となった。
その他の評価が×となった文はルールが完全でないためであり,ルールをさらに細かく してルールを拡大することで改善すると考えられる。


また,評価が△となった文脈に依存する表現においては,依存のタイプを3種類 に分類できた。以下にタイプと例を示す。


(1) 意味分類が名詞の情報だけでは不可能であるタイプ(54文)

例 : 先生の手紙 letter from teacher(対訳)/teacher's letter(規則)

(日本語)先生の手紙には温かみがこもっていた

(英訳) The letter from my teacher was full of warmth.


例 : ドラムのテンポ drummer's tempo(対訳)/ tempo of drum(規則)

(日本語)ドラムのテンポは曲とあまりよく合っていなかった

(英訳) The drummer's tempo was out of beat with the music.


例 : 良寛の書 calligraphy by Ryokan(対訳)/ Ryokan's calligraphy(規則)

(日本語)わが家では良寛の書を秘蔵している

(英訳) Our family's treasure is a sample of calligraphy by Ryokan.


例文のように「先生の手紙」と言っても「先生からの手紙」なのか「先生の(持っ ている)手紙」なのかは名詞「先生」と「手紙」からでは決定することはできな い。どちらの意味であるかを判断するには名詞句「先生の手紙」のあとに来る動 詞など,その他の情報を用いた文レベルでの翻訳が必要である。


(2) 文中での用い方に依存するタイプ(78文)

例 : きのうの豪雨 heavy rain yesterday(対訳)/ yesterday's heavy rain(規則)

(日本語)きのうの豪雨でその町は大きな被害を受けた

(英訳) The heavy rain yesterday did great damage to that town.


例 : 今の若者 young people today(対訳)/ today's young people(規則)

(日本語)今の若者があまり本を読まないのは,一つにはやること が多すぎるか

らだ

(英訳)Young people today don't read much because for one thing,they have too

many other things to do.

例 : きのうの上野公園

Ueno Park yesterday(対訳)/yesterday's Ueno Park(規則)

(日本語)きのうの上野公園は1万人を越す人出があった

(英訳)More than ten thousand people thronged to Ueno Park yesterday.


(3) 動詞として用いるタイプ(18文)

例 : 物理学の研究 study phsics(対訳)/ study of phisics(規則)

(日本語)ぼくは京都大学で物理学の研究をしたい

(英訳) I want to study physics at Kyoto University.


例 : 火山の爆発 The volcanic eruption(対訳)/ eruption of the volcano(規則)

(日本語)火山の爆発で大地が震動した

(英訳) The volcanic eruption made the earth shake.


例 : 食料品の買い出し buy food(対訳)/ shopping of food(規則)

(日本語)母は食料品の買い出しに出かけています

(英訳) My mother has gone to buy food.

Bの名詞がサ変動詞型(研究,掃除など)である場合は,文中で「AのB をする」 (例 : 部屋の掃除をする)と用いる場合,英語表現ではBの名詞を動詞形として用 いることが多い。


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kenji miyamoto
2001-03-19