複合動詞の翻訳形式を構成要素から決定する分類表を作成する.分類するための 標本として機能試験文集より抽出した675個の複合動詞を使用する.その内訳は, 動詞テ型+動詞が498個,動詞原型+動詞が177個である.ここで,標本として使用 する複合動詞を構成する単語は全て動詞であるので,これより前方の単語を前方動詞,後方 の単語を後方動詞と呼ぶ.
まず,標本に付与されている英訳を参照し意味的に分離できない複合動詞を標本 より除く.次に,残りの標本のうち翻訳形式に規則性があると思われる複合動詞 に対して以下のように構成要素を分類する. (1)後方動詞の分類
後方動詞は機能動詞が多く種類も少ない.そこで、以下の2点に分類する.
1.表記で分類 ─ 「はじめる」,「いく」,「ある」等で
分類
2.動詞の持つ意味で分類 ─ 「動作/現象の継続」,「現象/作用/状態の変化」, 「空間移動」等で分類 (2)前方動詞の分類
分類した後方動詞に対して接続される前方動詞を以下の順に分類する.
1.活用形(形式) ─ 「連用形」または「連用形+て」で
分類
2.相状態 ─ 「状態相」または「動作相」で分類
3.種類 ─ 「継続動詞」または「瞬間動詞」で分類
4.意志性 ─ 「意志動詞」または「無意志動詞」で分類
5.動詞の持つ意味 ─ 「行為」,「動作」,「位置/所有権
の移動」等で分類
例:鳴らし始める
鳴らす(連用形-動作相-継続動詞-意志動詞)
+はじめる(動作の発生)
以上により、前方動詞は5段18種、後方動詞は2段24種に分類する.その分類 を組み合わせて複合動詞の分類表を作成する.そして、分類表中に標本が出現 した箇所それぞれの訳語の中で頻度の高いものを翻訳形式と決める.得られた 分類表を表2に示す.#nは翻訳形式の番号を示す.また、翻訳形式一覧の一部 を表3に示す.
表3:翻訳形式一覧(一部)
番号 | 翻訳形式 | 語例 |
#2 | begin doing | 鳴らし(連用,動作相,継続,意志)+始める |
#3 | do up | 引き(連用,動作相,継続,意志)+上げる |
#4 | finish doing | 読み(連用,動作相,継続,意志)+終える |
例:鳴らしはじめる=begin ringing
→ begin doing(訳語の形式)
→ 翻訳タイプ2とする → ♯2と表記