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(3)パターンの格要素の制約が弱い場合

日本語文に対応するパターンにおける格要素を制約する意 味属性が『*(指定なし)』や『主体』などの上位の階層にあ る場合,訳語が一意に決まらない場合がある.具体例を例14及び例15に示す.

例14:彼は相手に意向を質した。

対訳14:He asked the other party of their intention.

ALT訳14:He asked his partner about a mind.

例15:彼の体はで損なわれている。

対訳15:His body has been ravaged by the drug.

ALT訳15:His body has been ruined with medicine.

例14では「$N$1(主体)が$N$2(主体)に$N$3(抽象)を質す」というパターンが対応 している.例14の訳し分け 対象の名詞「意向」には『意図』と『思想』の二つの意味属性 が定義されている.しかしこの二つの意味属性は共に『抽象』配下 である.よってこのパターンにおいて「意向」の意味属性は一意に決定できな い.したがって,大きく訳語を絞り込むことはできても一意に決定できない.

この原因はパターンが用言の訳し分けを目的に作られたのが原因と考えられる. つまり用言の訳語が同じパターンの場合,格要素の名詞の意味属性は, 他のパターンと住み分けができる程度までしか定義されていない.よってその意味属性 の範囲内での格要素の名詞の訳し分けは保障されていない. この問題の解決方法として「$N$1(主体)が$N$2(主体)に$N$3(意図,思想)を質す」と,意味 属性の制約を強めたパターンを追加することが挙げられる. 意味属性の制約を強くしたパターンの追加により,文意に合わせてパターン の意味属性を選択できるようになると考えられる. しかし入力文の情報から文意を判断し,正しい意味属性のパターンを選択する ことは現在の結合価文法では困難と考えられる.



平成15年5月19日