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時間副詞

文が表す時間関係には,時間副詞も重要な役割を果たしている. 本稿では,時間副詞を4つの属性により分類し,時間関係の詳細化に用いる. 分類表を表2に示し、各属性の説明を以下に述べる.

a.設定時
時間副詞が設定する時点である.E (事象時)を指す表現と,R (参照時)を指す表 現に分類する.例えば,「翌日に」では,翌日のある事象を指しているが、「翌日までに は」では,ある事象が翌日までに完了していることを表すため、参照時を指す.

表2: 時間副詞の分類表
属性 属性値
設定時 事象時, 参照時
基準時 絶対表現, 相対表現(発話時,内容時), 不明
基準時とのテンス 以前, 以後, 同時
時間区間 時点, 開始時, 終了時, 間隔

b.基準時
設定時を特定する際に、時間副詞のみで位置を決定できる絶対表現と,基準時を 必要とする相対表現に分類する.例えば「2001年に」は,絶対表現である.相対 表現は,さらに発話時を基準時とする表現、 文脈によって決定される内容時を基準とする表現に分類する.「昨日」は,発話時 の1日前を指しているため、発話時基準.「翌日」は,文脈によって示される内容 時の1日後を指しているため,内容時基準である. また基準時が判別 不可能な表現は,不明に分類する.「3時から」などがあてはまる.

c.基準時とのテンス
基準時が相対表現の場合には,基準時から見た設定時とのテンスを以前、以後, 同時関係に分類する.「昨日」,「明日」,「今日」は,発話時基準でそれぞれ以前, 以後、同時を指す.

d.時間区間
時間副詞が表す区間を,時点を明示する表現,開始時・終了時のみを明示する表 現、間隔を明示する表現に分類する.「翌日に」,「翌日から」,「翌日まで」 は,それぞれ時点,開始時,終了時を指す.間隔を明示 する表現には,「3日間」などがある.

その他に、「よく」や「いつも」,「3日おき」や「毎日」のよう な習慣,反復を表す副詞も対象とする.

4.1節で得られた時間関係は,特定の時間副詞を伴った場合に詳細化できる. 「動作動詞 + テイル」において,時間副詞から時間関係を詳細化する規則 を表3に示す. 表3は該当する時間副詞の属性と,文全体が表すアスペクト、そして特定された 時間関係からなる.なお表中の空欄は,特に指定する必要がない場合である.3つの規則そ れぞれに例文を示す.

表3: 時間関係決定規則 (動作動詞+テイル形)
  設定時 基準時 テンス 時間区間 文の アスペクト 時間関係
規則 1 事象時 相対表現(発話時) 以前 開始時 発話時までの動作継続 E(P)→ R=S
規則 2 事象時     間隔 発話時までの動作継続 E(P)→R=S
規則 3 事象時 相対表現(発話時) 以前 時点 過去の動作の結果 E→R=S

(例文13) 彼は昨日から走っている. $<$規則1$>$


(例文14) 彼は3時間走っている. $<$規則2$>$


(例文15) 彼は昨日走っている. $<$規則3$>$

一般に「動作動詞+テイル」は,発話時点における動作の継続を表す.しかし, 例文13,14のように,開始時や間隔を表す時間副詞を伴った場合は、ある過去時から発話時までの「走る」という動作の継続を表す. また,例文15のように,過去のある時点を指す副詞を伴った場合は, その時点で完了した動作の結果が発話時まで継続 していることを表す.


平成13年11月22日