表1: 動詞分類表 | |||
動詞の種類 | 例 | ||
状態動詞 | ある,いる | ||
内的動作動詞 | 思う,考える | ||
動作動詞 | 外的動作動詞 | 走る,書く | |
変化動詞 | 着く,終わる |
3節で述べたS,E,Rの関係は,動詞の時間的性質に依存している.さきほど分類した動詞そ
れぞれに対する時
間関係規則を以下に示す.なお「*」は,すべての動詞にあてはまることを示し
ている.
1.[ル形]
状態動詞,内的動作動詞 : S=R=E
外的動作動詞,変化動詞 : S=R=E or S→R=E
(例文3) ここに本がたくさんある.
状態動詞
(例文4) 私は君の成功を祈る.
内的動作動詞
(例文5) 彼は50mを泳ぐ.
外的動作動詞
(例文6) 彼は、八時すぎに家を出る.
変化動詞
状態動詞のル形は,現在の状態,内的動作動詞のル形は,現在の思考・感情を表して
いる.
例文3では,「ある」という現在の状態,例文4は,現在の思考を発話時から捉えてい
る.
例文5,6のように外的動作動詞・変化動詞がル形をとると,現在,または未来の事象を表す.
2.[タ形]
* : E=R→S
(例文7) 彼らは彼のことを笑った.
動作動詞
状態動詞のタ形は,過去の状態,動作動詞,変化動詞は,過去の動作などの過去の出来事を,事象時
から捉えている.例文7では,「笑った」という過去の事象を,その時点にさかの
ぼって捉えている.
3.[テイル形]
動作動詞 : E(P)=R=S
変化動詞 : E→R=S
(例文8) 彼は本を読んでいる.
動作動詞
(例文9) 窓が開いている.
変化動詞
動作動詞のテイル形は,現在進行中の動作,変化動詞では,過去に発生した動作を発
話時から捉えている.例文8では,発話時において進行中の「読む」という動作を
捉えている.例文9では,過去に発生した「開く」という事象の結果を発話時か
ら捉えている.
4.[テイタ]形
動作動詞 : E(P)=R→S
変化動詞 : E→R→S
(例文10) 彼は本を読んでいた.
動作動詞
(例文11) 窓が開いていた.
変化動詞
動作動詞のテイタ形は,進行中の動作,変化動詞は,
完了した動作の結果を,過去のある時点から捉えている.例文10では,「読
む」という進行中の動作を過去のある時点から捉えている.例文11は,過去に発生
した「開く」という事象の結果を過去のある時点から捉えている.
5.[ル+ダロウ形]
* : S→R=E
(例文12) 彼女は必ず来るだろう.
変化動詞
動詞のル形にダロウがつくと,発話時点で事象が未然であることを推量の意味をこめて
表す.例文12は,発話時において未然の「来る」という事象を捉えている.