本稿では、言語で表現された位置関係の意味理解を主題として、文中の語句の もつ様々な性質に注目し、それらを組み合わせることによって2対象間の 位置関係を解析する手法を提案、その手法に対して評価実験の後、検討を行っ た。
ある程度限定された表現の範囲内ではあるが、 762文のうち618文で正解 を得ることができた。正解率にして80.3%という結果が得られた。
しかし、今回提案した手法によって得られる位置関係は、抽象的な部分がまだ多 く含まれていることは否めない。例えば、方向領域の「広がりがある」とか、距 離特性の「近距離」や「遠距離」などである。もともと、言語で表現された空間 は曖昧さを伴うものであるので、どの程度まで抽象概念を許容するべきか判断の 難しいところである。
しかし、応用の目的によってそれは大きく変ってくると思われる。第一の目的は 翻訳での中間言語としての応用である。この場合なら、ある程度の抽象概念は許 容されるように思われる。非常に厳密に分類して無数の位置関係のパターンを生 成したとすると、逆に中間言語としては適さないのではないかと考えられる。
あるいは、文中に表現された空間を''絵''のような形で出力しようとするなら、 曖昧な部分はあまり残されてはならないと思われる。
現段階で得られる位置関係のもつ曖昧さの問題は、大半は、対象の形や大きさと いう情報の適用によって対策が可能になると考えられる。曖昧さの代表ともいえ る対象間の距離の「近い・遠い」などは、その顕著な例である。
いずれにせよ、現段階のルールにはまだまだ改善の余地がある。 曖昧さへの対策も含めて、 まずは対象と対象や、対象と動詞など、語句と語句との一般的な意味的関連へ の着目が不可欠である。言い換えれば、計算機上にいかに''常識''を理解させる かがポイントであると言える。