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1 はじめに


我々が言語で表現される対象の位置関係を理解しようとするならば、普通それは これまでの経験や認識をもとにした知識・情報に基づいて、頭のなかである程度 具体的なイメージを描くことによって為されると考えられる。 つまり、言語による位置的関係表現の意味解析には、言語表現からその位置関係 のイメージを作成することが有効であると考えられる。

この観点から本稿では、日本語で表現された対象の空間的位置関係の機械による 自動理解の実現を目指し、その手法について提案する。

言語によって表現された空間についての研究では、[1]や[2]が見られる。[1]で は、主に2対象間の空間的関係の抽出を行う際に必要となる情報の補完について 述べており、また[2]では、空間理解のためのイメージ生成の方法論、その問題点 や有効性について論じている。ともに言語で表された空間の意味の解析に必要と 考えられる様々な概念について論じているが、データを用いて評価実験を行 うような具体的手法の提示には至っていない。

今回、本稿では「前・真前・前方・正面・向かい・手前・うしろ・真うしろ・後 方・背後・向こう・右・左・横・真横・隣・上・真上・下・真下」という20種 類の方向に関する語句を方向提示語句と呼び、それらを軸として2つの対象の 位置関係を表現している日本語文を研究の対象とする。そして、対象となる文のなかに 現れる語句の持つ性質と、2つの対象の持つ様々な特徴に注目し、得ら れる情報を用いて位置関係を導出する方法を考える。さらに、その手法に対して 仮想実験をおこない、評価・検討する。




平成13年11月25日