本研究では抽象名詞「こと」の意味的役割を明確にする手法を提案した. 分類にあたっては日英機械翻訳への適用を考え,英語表現に対応 づけ可能なレベルの意味に分類することを狙った. また,分類のための情報としては,主として前後に出現する語の字面,品 詞を用いた.これらを考慮した結果,21種類に分類した.
分類結果から得られたルールを日英機械翻訳機能試験文133文と新聞記事 560文に適用した.結果,機能試験文ではカバー率82%適合率98%,新聞記 事ではカバー率67%適合率86%を得た.
これらの結果から抽象名詞「こと」の前後の語だけである程度解析できるが,それ以上 の精度を求めるためには係り先や格の影響など,他の情報も必要なことがわかっ た.