形容詞の観点について

本稿での「の型名詞句」の係り先決定法では形容詞を字面のまま扱うため,計算 量が膨大になるという欠点がある.この点については形容詞を観点によってグルー プ化することで解決できると思われる.

形容詞は量的観を持つものと質的観点を持つものとに大別できると考えられる. 量的観点を持つ形容詞とは,主観を程度によって表現できる形容詞である.量的 観点を持つ形容詞はさらに以下のように分類できる.

量的観点を持つ形容詞

• 空間的量の大小    $\bullet$美醜    $\bullet$におい
• 速度   $\bullet$新旧   $\bullet$強弱   $\bullet$温度
• 難易   $\bullet$味   $\bullet$音         $\ldots$など

また,質的観点を持つ形容詞とは,主観を程度による相対的な表現ではなく,絶 対的な主観によって表現する観点である.質的観点はさらに,話し手の主観を反 映する場合と,名詞の概念に付随する場合とに分類できる.

質的観点を持つ形容詞

• 話し手の主観を反映する質的観点
• 色に関する質的観点            $\ldots$など

並列型名詞句での解析手法では抽象度の概念を導入し,形容詞が``2つの名詞の 抽象度が同程度になるよう''に働いていると仮定した.このことは,形容詞の観 点を考えるうえでは,``ある観点における名詞の意味距離が同程度になる''と考 えることができる.