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結論

本稿では名詞の訳語選択の問題に対して、訳し分けのための手掛かりを 得るために以下の2点について検討した。まず、意味属性体系の持つ 語義識別能力に着目し、その有効性を明らかにした。また、新聞記事 の対訳コーパスを用いた統計によって、出現頻度を考慮に入れた 訳語選択法について検討した。

その結果、意味属性の語義識別能力については、意味属性を 用いることで複数の訳語候補を持つ名詞の87%に対して 訳し分けや候補の絞り込みなどの効果が得られたほか、 平均多義数が約半分に減少、正解が得られる確率がおよそ2倍に 向上するなどの効果もあった。また、意味属性ではまったく訳し 分けることのできない名詞も13%ほどあったが、対訳コーパスによる 統計の結果を見るとこれらの名詞は出現回数の少ないもの多く、 新聞記事を対象とした訳し分けではそれほど問題にならないと思われる。 さらに、意味属性体系の拡張についての検討も行ったが、結果は6%の向 上にとどまった。以上より、意味属性は訳語選択に おいて有効であること、そして、意味属性のみによる訳し分け の能力は現段階でおよそ限界であることが示された。

新聞記事を用いた統計では、訳し分けにおいて特に問題となりそうな 名詞は、検討の対象とした106語のうち14%ほどであった。 また、これらの名詞に対して意味属性のよる訳し分けを行った結果、 効果は得られたものの、意味属性では訳し分けることができない名詞も 含まれていたため、各名詞ごとに個別ルールを作成した方が良いと 思われる。



kirisawa
2000-03-15