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本手法の問題点と課題

問題点としては以下の点が挙げられる。
[1.結合価パターン選択による誤り]

  
Figure: 結合価パターン選択誤り
9#9

結合価パターン選択を誤る場合、名詞に対して用法にあった意味属性がふられて いないこと、格要素選択の誤りなどが原因として挙げられる。 例えば、図[*]の場合、「安定する」の要素として格要素の 「みんな」と底の名詞の「生活」が考えられる。 実際は「生活が安定する」であるが、ここだけに着目して「みんな」よりも「生 活」を結合価パターンで選ぶことは難しい。 今回、「みんなが安定する」のパターンを選択してしまうことから 「得る」のガ格「みんなが」との共通性から係ると判断してしまうよ うな場合があった。 今回は結合価パターンの格における名詞意味属性の深さでスコア付けを 行ったが、このような場合深さによるスコアに違いが出ない場合も少なく ない。ただし、一文全体の係り受けの スコアによって解決できる ものもあると思われる。

[2.形式名詞による埋め込み文での誤り]

  
Figure: 形式名詞による埋め込みの場合
10#10

また、図[*]のように形式名詞を使った格要素「〜ものを探り、」 などを持つ場合、「問う」の格要素である「在り方」と「問う」の格要素の間の 親子関係などを正しく判断できない。ここでは「在り方」は「再審の在り方」で、 「逆転の意味するもの」との関係は薄いが、今回の方法では「在り方」は「もの」 の下位属性として扱われてしまい、誤る結果となる。
[3.その他の問題] また、これらの問題の他に、今後の課題として以下のものがあげられる。
1
省略要素の文外照応
2
外の関係の取得

省略要素の文外照応に関しては、既存の技術の応用が期待できるが、用言の並列 関係の判断にも効果があると思われる外の関係の取得は困難である。ただし、 「変質したりする(と言う)危険」のような場合に限って、「〜と言う」で制限さ れるような同格の関係であることから関係を推測できる可能性もあると考えてい る。 また、今回は171例という少ない用例での規則作成であったので、規則の増補も 大きな課題と言える。


asano
2000-03-15