第11回 Prolog の概要（6月28日）

今日の課題

Prolog の操作
Prolog の文法(項、事実、規則)
質問

■ Prolog の操作

処理系

本演習では、SWI-Prolog という処理系を使用する。SWI-Prolog は、Linux 版と Windows 版の両方が存在する。Web ページからダウンロードして、自分のパソコンで使用できるようにしておこう。

  http://www.swi-prolog.org/

基本操作

起動： コンソール上で、次のコマンドを実行
pl
プログラムのロード： Prolog コンソール上で以下を実行
?- ['ファイル名'].
終了： Prolog コンソール上で、Control-d と押す。

プログラムの例

プログラムは、emacs などのエディタを用いて作成する。以下に例を示す。
%-*-prolog-*- % list1101.pl % 犬 dog('ミニチュア・ダックスフント'). dog('ミニチュア・シュナウザー'). dog('ポメラニアン'). dog('パピヨン'). dog('トイプードル'). dog('ウェルシュ・コーギー・ベンブローク'). dog('アメリカン・コッカー・スバニエル'). % 好み like(taro,X) :- dog(X).

% はコメントの始まりを表す記号である。

１行目の -*-prolog-*- は、emacs でのプログラミングを楽にするためのおまじないである(M-x prolog-mode の効果がある)。emacs を使わない場合は不要である。

５～１１行目は、dog についての知識である。１４行目は、like (好み)についての知識である。

練習１

まず、emacs を使って、上記のプログラムを入力しよう。セーブする際、ファイル名は「list1101.pl」とせよ。次に、コンソール上で、SWI-Prolog を起動せよ。それから、上記プログラムをロードせよ。ロードに成功すると「% list1101.pl compiled 0.00 sec 648 bytes」「Yes」と表示される(bytes数の違いはあるかもしれないが)。「ERROR:…」のように表示された場合は、入力にミスがあるので、エラーメッセージをよく読み、修正しよう。

■ Prolog の文法

項

変数： 大文字アルファベットで始まる英数字列
アトム： 小文字アルファベットで始まる英数字列、または、シングルコーテーションで囲まれた文字列(例 'abc' など)
数：例 123 や -1.23 や 4.5e-6 など
複合項：
- 引数付きアトム： 例 dog('パピヨン') や dog(X) など
- 派生タイプ：
  - リスト： 例 [1,2,3] など ⇒ 引数付きアトムでの表記 '.'(1,'.'(2,'.'(3,[])))
  - 文字列： 例 "abc" など ⇒ リストでの表記 [97,98,99] (文字コードのリスト)
  - 演算子： 例 2 < 1 や X =< 3 や 2 >= Y など ⇒ 引数付きアトムでの表記 '<'(2,1)

知識(プログラム)

事実： P. の形式。P が true であることを宣言する。例 dog('パピヨン').
規則： P :- Q, R,…,S. の形式。P が true であるためには、Q, R,…, S が true でなければならないことを宣言する。例 like(taro,X) :- dog(X).

■ 質問

Prolog には２とおりの質問がある。

質問1： 変数を使わずに項を入力する。
質問2： 変数を使って項を入力する。

例題１

動作確認として以下を実行してみよう。
?- dog('パピヨン'). ?- dog(X).

１行目は、「質問1」である。Yes か No という返事が返る。

２行目は、「質問2」である。変数 X に該当するものが返る。セミコロンキーを押すと、X に該当するものが次々と表示され、Enter キーを押すと X が定まる。全ての該当するものが表示されると、それ以上に答がないので、No という返事が返る。

練習２

list1101.pl に次の事実を追加して、list1102.pl を作成しよう。

'ミニチュア・ダックスフント' から 'トイプードル' までが小型であること( small )
残りの２つが中型であること( middle )

たとえば、small('パピヨン'). により、'パピヨン'が小型であるという事実を表すこができる。

動作確認として、次の実行をしてみよう。
?- dog('パピヨン'). ?- small('パピヨン'). ?- middle('パピヨン').

質問に対しては、Yes か No が返される。

例題２

複数の条件で質問をしてみよう。

中型の犬は何ですか？
小型の犬は何ですか？
中型の犬と小型の犬をそれぞれ１種類挙げて下さい。

?- dog(X), middle(X). ← 中型の犬という意味になる。
?- small(X), dog(X).  ← 小型の犬という意味になる。
?- dog(X), middle(X), dog(Y), small(Y).

変数を使った質問なので、変数に該当するものが返される。セミコロンのキーを押すと、別の答えが返される。

■ 規則の作成

前半で示した like(taro,X) :- dog(X). は規則である。この意味は、「taro は犬が好き」、「taro が好きなものに、犬がある」である。しかし、計算機は、こうした日本語の意味を関知しておらず、単に、「 like(taro,X) が true になるには、 dog(X) が true にならなければならない」とだけ知識にしており、「like」についての質問があると、「:-」の右辺の成立を確認して、「Yes/No」を返している。

規則の書き方について、直観的な説明をするとすれば、『「:-」の右側に質問を記述し、左側にはその呼出し名を記述せよ』ということになる。

例題３

「hanako は、中型の犬が好き」という規則をlist1102.plに追加しよう。
(list1102.pl の末行) like(hanako,X) :- dog(X), middle(X).

練習３

list1102.pl に次の事実と規則を追加して、list1103.pl を作成しよう。

'アメリカン・ショートヘアー' は猫であるという事実「cat('アメリカン…').」
'シャム猫' は猫であるという事実
猫は小さいという規則「small(X) :- cat(X).」
「ichiro は、小さいものが好きである」という規則「like(ichiro,X) :- small(X).」
「jiro は、犬が好きである」という規則「like(jiro,X) :- dog(X).」
「saburo は、小さい犬が好きである」という規則
「shiro は、中型の猫が好きである」という規則

次の質問をしてみよう

ichiro, jiro, saburo, shiro がそれぞれ何が好きか
'パピヨン' が好きな人は誰か
'ウェルシュ・コーギー・ベンブローク' が好きな人は誰か

ichiro と jiro が共に好きな犬は何か？

 ヒント：like(ichiro,X), like(jiro,X), dog(X) の３つが同時に true になるもの

□ 小レポート

list1103.pl に次の事実と規則を追加して、prac1101.pl を作成しよう。

入力した全ての犬について、体高 height と体重 weight の事実を追加せよ。なお、基本データは次の表のとおりとする。

種類	体高	体重
ミニチュア・ダックスフンド	15 cm	4.8 kg
ミニチュア・シュナウザー	35 cm	7 kg
ポメラニアン	20 cm	3 kg
パピヨン	28 cm	4.5 kg
トイプードル	28 cm	5 kg
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク	30.5 cm	13.5 kg
アメリカン・コッカー・スパニエル	38 cm	13 kg

参考：Goo のペット図鑑、http://channel.goo.ne.jp/pet/zukan

事実は、名前と数値を第一、第二引数とする。たとえば、height('パピヨン', 28). と weight('パピヨン', 4.5). とする。単位は入力しない。

「goro は、小型犬が好きである」それから「goro は、体高が 32 cm 未満の犬が好きである」という２つの規則
「rokuro は、体重が 4.5 kg 以上の犬が好きである」という規則

ヒント：'パピヨン' の体重を尋ねる質問は「?- weight('パピヨン',W).」である。'パピヨン' の体重が 3kg 以上であるか否かを尋ねる質問は、「?- weight('パピヨン',W), 3 =< W.」である。

実行結果として、次の質問の結果を示せ。

「goro の好きなものは何ですか？」
「rokuro の好きなものは何ですか？」
「goro と rokuro が共に好きなものは何ですか？」

小レポートには、「プログラムソース」、「手書きのコメント(何が事実で、何が規則か。規則はどんな意味か。)」、「上記3点の実行結果の画面」、「実行結果への手書きのコメント」を記載すること。