パワーと音韻継続長は音韻種類と前後音素環境に大きく依存していると思われ る.また,単語発声の場合,一般に語頭は強く発声され,語尾に向かって パワーは弱くなる.語尾の音節は語中に比べて比較的長めに発声される.そし て短い単語は比較的遅く(つまり各音節は長く),長い単語は比較的早く(各音 節は短く)発声される傾向がある.そのため,音節種類と前後音素環境に加え て各音節の単語内モーラ位置と単語のモーラ数を用いることで,各音節のパワー, 音韻継続長を十分記述できると予想した.
以上のことから,本論文では,地名の音声合成の場合は各音節の持つ韻律的特 徴を単語のモーラ数と各音節の単語内モーラ位置と前後音素環境で表現するこ とができると仮定した.
なお,本論文では,モーラは拗音「ャ」「ュ」「ョ」以外の仮名1文字(促音 「ッ」を含む)を1モーラと数え,仮名2文字で表わされる音節のモーラ位置は 2文字のうち最初の方のモーラ位置とする.例えば「東京都」は5モーラの単語 であり,音節として「トー」「キョー」「ト」の3つに分かれ,各音節のモー ラ位置は1,3,5となる.