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まえがき

音声信号は、音韻情報のほかに韻律情報を含んでいるが、従来の音 声認識では主に音韻情報に着目されていて、韻律情報を利用した音 声認識は、全体としては研究があまりされていない。これは、現段 階ではピッチの抽出が必ずしも容易でないこと、韻律情報は個人差 が多く、さらに地域差が存在するため基準が定まらないなどの理由 であろう。しかし、韻律情報は音声認識にとって1つの有効な情報 源であり、その効果が期待される。例えば高橋ら[1] は、単語認識において、韻律情報が有効であることを示した。今後 も韻律情報を利用した音声認識の手法の研究は重要であろう。

一方、韻律情報がどれほど有効であるか、他の種類の情報(音響情 報、言語情報)と同一の尺度で比較することも、重要な課題である と考えられる。たとえば、韻律の持つ情報量を定量的に把握してお くことは望ましいが、まだ研究がなされていない。

そこで、本論文ではそのような予備的な研究として、かな漢字変換 系における韻律情報の利用に着目して、韻律の持つ情報量の定量的 な把握を試みた。韻律情報は$F_0$, power, durationなどの多くの 要素からなりたっているが、本論文では、この中から特にアクセン ト句境界の位置およびアクセント核の位置の持つ情報量に焦点を当 てて情報量を測定した。



Jin'ichi Murakami 平成13年10月5日