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表現構造とクラスの記述

ところで,ほぼ無数とも言える言語表現をなるべく少ない構造規則でカバーする には,汎用性の高い構造規則を生成することが望まれが,一方,多彩な言語表現 をカバーするためには,個別的な表現に対する規則も記述できる必要がある.そ こで,汎用性の程度に応じて柔軟に規則を記述するため,「構造定義部」の変数 ${A_i}$は,下記に示す4種類の言葉もしくは記号のいずれかで記述するものとする.
$\displaystyle {A_i}=\left\{
\begin{array}{@{\,}ll}
*:&オールマイティ(無指定)\\ ...
...単語の意味的用法を表す言葉\\
字面:&標準表記された原文文字列
\end{array}\right.$     (2)

上記の変数は,「オールマイティ」,「文法属性」,「意味属性」,「字面」の 順に適用範囲が広いと考えられる.すなわち,「オールマイティ」は,制約条件 のないことを意味しており,最も汎用性が高い.「文法属性」,「意味属性」で は,使用する文法体系の違いなどによって,種々の分類法が考えられるが,通常, 言語解析では「文法属性」は,数10程度に分類されるのに対して,「意味属性」 は,数百から数千種類に分類される.これに対して,字面情報は,単語の数で見 ても10万種類以上となり,それで定義された規則は汎用性に乏しい規則となるが, 言語表現には,慣用句など字面指定によって解釈の決まるような表現も多数存在 する.

図: 文法属性体系の例 (日英機械翻訳システムALT-J/Eの場合)
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\epsfile{file=zu1.eps,scale=0.9}
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図: 一般名詞意味属性体型の例 (「日本語語彙体系」の場合)
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=zu2.eps,scale=0.9}
\end{center}\vspace*{-4mm}
\end{figure}

本論文では,「文法属性」として,日英機械翻訳システムALT-J/Eで使用されて いる「文法属性体系」(池原ほか 1987;宮崎ほか 1995)を使用し,「意味属性」 としては,「日本語語彙大系」(池原ほか 1997)で定義された「単語意味属性 体系」を使用する.文法属性体系と単語意味属性体系の一部を,それぞれ,図1, 図2に示す.

次に,式(1)のクラス定義部のクラス$C$は解釈を示す記号であり,構造規則の 種類に応じて,統語的,意味的解釈を与える記号として使用される.例えば,前 述の「$AのBのC$」の形の名詞句では,名詞$A$の係り先が名詞$B$の場合と名詞$C$ の場合の2種類の解釈の可能性があるから,これを区別するには,構造規則では, $C=\{b係り,c係り\}$とすればよい.また,「形容詞$+AのB$」では, $C=
\{a係り,b係り\}$となる.また,「 $A
のB$」の英訳規則の場合は, $C=\{\rm {of}型,\rm {in}型,所有代名詞型,\dots\}$のように なる.


Jin'ichi Murakami 平成13年9月13日