ここでは分類分けが高で置き換え可の値が低かったものとして,「迎撃」「出撃」と「遅れる」「進む」と「鈍い」「鋭い」と「うっすら」「はっきり」に関して考察する.
まず,「迎撃」「出撃」に関して考察する.
「迎撃」「出撃」は置き換え可と判断された割合は0.27(8/30)である.
表5.1に機械学習の性能を示す.表5.2に機械学習が重要と判断した素性を示す.
Table 5.1:
機械学習の性能(「迎撃」「出撃」)
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データ数 |
再現率 |
迎撃 |
518 |
93.25% |
出撃 |
518 |
95.18% |
Table 5.2:
機械学習が参考にした性能(「迎撃」「出撃」)
迎撃 |
出撃 |
素性 |
数値 |
素性 |
数値 |
素性1:核 |
0.9991 |
素性1:終結 |
0.9991 |
素性1:防衛 |
0.9990 |
素性1:太平洋 |
0.9991 |
素性1:ミサイル |
0.9988 |
素性1:沖縄 |
0.9989 |
有用な素性としては,「迎撃」は,「核」「防衛」「ミサイル」など, 戦争に関するものが多く見られた. 以下に例を示す.
- たぶん、米国が構想している宇宙での戦略核ミサイル迎撃システムに反対し、国際規模の地上からのミサイル迎撃ミサイルを意味しているのではないか。
- 韓国の現在のミサイル防衛体制では迎撃体制では迎撃体制では名詞能力が不十分だとされ、在韓米軍が配備を検討している。
「出撃」は「太平洋」「沖縄」など, 戦争の中でも第二次世界大戦に関するものが多かった. これは, 新聞から文を抽出していることが原因の一つだと考える. 以下に例を示す.
- 45年4月、米軍が上陸した沖縄を救うべく特攻出撃したが、わずか2時間余りの戦闘で米軍機に撃沈された。
- 太平洋戦争末期の1945年4月、米軍が上陸した沖縄に向けて出撃し、撃沈された「大和」を中心とする艦隊の戦没者を伴う。
.
置き換え可の値が低い理由としては,「出撃」の文中内での対義語が「迎撃」ではなく「撤退」と置き換えることもできたため, 置き換え可の値が低くなったと考えられる. さらに, 「迎撃」「出撃」は慣用的表現が少なかったからだと考えられる.
次に,「遅れる」「進む」に関して考察する.
「遅れる」「進む」は置き換え可と判断された割合は0.27(8/30)である.
表5.3に機械学習の性能を示す.表5.4に機械学習が参考にした素性を示す.
Table 5.3:
機械学習の性能(「遅れる」「進む」)
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データ数 |
再現率 |
遅れる |
1000 |
92.00% |
進む |
1000 |
90.30% |
Table 5.4:
機械学習が参考にした性能(「遅れる」「進む」)
遅れる |
進む |
素性 |
数値 |
素性 |
数値 |
素性1:半島 |
0.9968 |
素性1:向き |
0.9986 |
素性1:復興 |
0.8993 |
素性1:の |
0.8402 |
有用な素性としては,「遅れる」は,「半島」「復興」など政治に関係するものが見られた.以下に例を示す.
- 紀伊半島の被災地は大半が山間部の過疎地で、河川の急激な増水や岩盤ごと土砂が崩れ、避難情報を伝える防災行政無線が水没して使えず、非難が遅れるなどした。
- 復興用地取得の迅速化のため復興特区法が改正されたが、精度設計に問題があり、遅れることもある。
「進む」は「動く」といった意味で使われ, 「遅れる」が対義語でない場合の使われ方が見られた. 以下に例を示す
- 風下に進むのは簡単だが、風上に向かうところがみそだ。
- ベストを尽くして準決勝までは進む。
置き換え可の値が低い理由としては,「進む」は「動く」や「向かう」という意味で使われ, 「遅れる」の対義語として使われていなかったため置き換え可の値が低くなったと考えられる.
次に「鋭い」「鈍い」に関して考察する.
「鋭い」「鈍い」は置き換え可と判断された割合は0.40(13/30)である.
表5.5に機械学習の性能を示す.表5.6に機械学習が参考にした素性を示す.
Table 5.5:
機械学習の性能(「鋭い」「鈍い」)
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データ数 |
再現率 |
鈍い |
746 |
93.82% |
鋭い |
746 |
94.65% |
Table 5.6:
機械学習が参考にした性能(「鈍い」「鋭い」)
鈍い |
鋭い |
素性 |
数値 |
素性 |
数値 |
素性1:動き |
0.9946 |
素性1:眼光 |
0.9955 |
素性1:人 |
0.9768 |
素性1:知性 |
0.9868 |
素性1:輝き |
0.9288 |
素性1:追及 |
0.9826 |
有用な素性としては,「鈍い」は「人」「輝き」など慣用的な表現が見られた.以下に例を示す.
- 一見彼より鈍い人が実は悪がしこく危険ということを見逃し、裏切られたのがクーデター事件だ。
- 鈍い輝きを放つ10円玉が淡い青春を彩っていたのだと思うと、どす黒くなった10円玉でさえきれいに見えてくるから不思議だ。
- 東京電力福島第1原発の汚染水漏れ事故をめぐる国会の動きが鈍い。
「鋭い」は「眼光」「知性」「追及」など慣用的な表現が見られた. 以下に例を示す.
- 普通なら動揺して崩れがちな場面でも、鋭い眼光で相手を見据え、時には大声で自分を鼓舞する、たくましさが際立った。
- 「ヨーロッパでもっとも鋭い知性」とサルトルが評した思想家。
- 鋭い追求とテレビ出演の多さから参院の「顔」の一人となっている山本一太議員。
置き換え可の値が低くなった理由としては,「鈍い」は「人」「輝き」などの単語とともに使われ, 「鋭い」は「知性」「追及」などの単語とともに使われた。「鋭い」「鈍い」ともに慣用的な表現がよく使われているため置き換え可の値が低くなったと考えられる。
次に「うっすら」「はっきり」に関して考察する.
「うっすら」「はっきり」は置き換え可と判断された割合は0.23(7/30)である.
表5.7に機械学習の性能を示す.表5.8に機械学習が参考にした素性を示す.
Table 5.7:
機械学習の性能(「うっすら」「はっきり」)
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データ数 |
再現率 |
うっすら |
397 |
95.70% |
はっきり |
397 |
92.26% |
Table 5.8:
機械学習が参考にした性能(「うっすら」「はっきり」)
うっすら |
はっきり |
素性 |
数値 |
素性 |
数値 |
素性1:染 |
0.9992 |
素性1:結果 |
0.9981 |
素性1:汗 |
0.9991 |
素性1:依然 |
0.9984 |
素性1:涙 |
0.9990 |
素性1:態度 |
0.9979 |
素性1:雪 |
0.9970 |
素性1:追及 |
0.9826 |
有用な素性としては,「うっすら」は「染」「汗」「涙」「雪」などの単語と同時に出現しやすいことが見られた.以下に例文を示す.
- 低くたれ込めた雲の切れ目がうっすらと、赤く染まっていた。
- 背中にうっすらと汗が光る。
また,「うっすらと染まる」「うっすらと見える」という表現が多く見られた.
「はっきり」は「結果」「依然」「態度」などの単語と同時に出現しやすいことが見られた.以下に例文を示す.
- この結果について、同連合会は「これまで言われていた不満が数字ではっきり出た」と判断。
- まず「国土強靭化」が何かを意味するかが依然としてはっきりしない点だ。
- はっきりさせる(和田会長)と態度を一層硬化させた。
また,「はっきりする」「はっきりとした」という表現が多く見られた.
置き換え可の値が低くなった理由としては,「うっすら」は「光」や「雪」などのような単語とともに使われ,「うっすらと見える」「うっすらと染まる」という慣用的な表現が多く使われていた. 「はっきり」は「はっきりする」という慣用的な表現がとてもよく使われており,ともに慣用的な表現がよく使われているため置き換え可の値が低くなったと考えられる.
分類分けが高で置き換え可の値が低かったものとして「迎撃」「出撃」と「進む」「遅れる」と「鋭い」「鈍い」と「うっすら」「はっきり」を考察した.その結果,分類分けが低で置き換え可の値が高かったものの特徴として,佐々本ら[3]と同様に以下のようなものが見られた.
- 慣用的な表現が多い,もしくは特定の慣用的な表現がよく使われる
- 多義性がある
- 有用な素性が多く得られる