概要

コールセンターにおいて,ユーザの状態の把握やトラブルの解決に時間がかかることが問題となっている.このことからコールセンターにおいてチャットボットの導入が検討されている.そこで村田ら[1]は,情報抽出の技術を利用し,コールセンター業務支援となるチャットボットへの応用に役立つようなフローチャート作成を行った.しかし作成されるフローチャートには類似箇所が複数出現する場合があった.そこで本研究では,類似箇所のマージを行うことでフローチャートを簡略化する.

村田らの研究では,情報抽出の技術を用いコールセンターでの対話データを表の形に整理し,表から対話に役立つフローチャートの作成を行っていた.

本研究では,フローチャートの類似箇所をマージすることによって,フローチャートの規模を縮小し,フローチャートを簡略化する手法を提案する.マージの判定は類似箇所の対話の内容を基準に3種類の判定方法で行う。 マージを行うことで,フローチャートの規模が縮小し,チャットボットの管理を行う際に対話の全体像を素早く把握できるフローチャートになると考えられる.

「電源がつかない」の問診20件と「再生中にフリーズする」の問診20件で提案手法の3種類の判定方法で実験を行った結果,「電源がつかない」のフローチャートのノード数が97個からそれぞれ25個,64個,56個に減少し,「再生中にフリーズする」のフローチャートのノード数が74個からそれぞれ24個,47個,44個に減少した.3種類のマージの判定方法全てでフローチャートのノード数が減少し,フローチャートの規模が縮小した.

フローチャートの簡略化は行えたが,マージをする際にフローチャートの対話内容に変化が起こることがあった.情報が増加しより良い内容になることもあったが,内容が変化し対話の流れが不自然になる場合もあった.類似箇所をマージしているためこのようなことが生じる.

今後の課題として,類似箇所でマージを行っても対話が不自然にならないマージ箇所の判定方法を見つけることが考えられる.