中瀬らは副詞の類義語の使い分けのために機械学習を使用し,複数の副詞の類義語対について,どの程度使い分けが必要か, またどのような場合に使い分けが必要かなどを新たに示した.
中瀬らはEDR電子化辞書と1991年から1995年の毎日新聞を使用し,以下の条件を満たす副詞の類義語を獲得した.
獲得した副詞の類義語対について,類義語対ごとに類義語の使い分けの実験を行った.入 力文は,1991 年から1995年の毎日新聞から獲得した,類義語対のいずれかの語を含む文である. 評価は10 分割のクロスバリデーションで行った. 機械学習の再現率の高さごとに副詞の類義語対を,高・中・低に分類し, 機械学習における素性(学習に用いる情報のこと) を分析することで類義語の使い分けに重要な情報を把握した.
強田らの研究の成果として,機械学習を用いた副詞の類義語の使い分けの手法自体が類義語の使い分けに有効であることを示した. 更に,機械学習での性能に基づき使い分けが必要な副詞の類義語対とそれほど必要でない副詞の類義語対を明らかにした. また,実際に素性を分析した.使い分けに役立つ情報を明らかにし,どのような場合に使い分けの必要があるかを明らかにした. 使い分けが必要な副詞の類義語対として「きわめて」と「だいぶ」,「そっくり」と「すっかり」, 使い分けが必要でない類義語対として「さして」と「さほど」,「ことごとく」と「すっかり」があった.
本研究ではこの先行研究をもとに実験を行う. 先行研究では名詞・副詞の類義語を扱っているが本実験では動詞・形容詞の類義語を扱う.