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同義語間の選択についての調査

西尾は,同一の個人が状況や場面に応じて使い分ける同義語と,ある人はふつう一方の語を,他の人はふつうもう一方の語を使うというような同義語があるとし,今回は主に後者のような同義語についての選択を調査している[1]. 調査方法は,調査対象者に意味の似た言葉の対を複数提示し,親しい人と話すときにどちらを使って話すかを回答してもらう.それを年齢・性別・地域で分けてどのような選択の違いが見られたかを調べる.

調査した同義語対は,性質によってAからDに分類し,分類方法は表2.1の通りとする.


表: 同義語対の分類
分類 性質
A 外来語を一方にもつ同義語対 デパートと百貨店
B 旧式語を一方にもつ同義語対 婚礼と結婚式
C 日常語と文章語の同義語対 双生児とふたご
D その他 通信簿と通知表

調査結果を簡潔に記すと,選択の差が一番顕著に見られたのが年齢による区別で,選択の差があった同義語対としては「プレゼント」と「おくりもの」があった.この対は,若い世代へ移るほど「プレゼント」の割合が増加している傾向にあった.性別での差が見られた同義語対としては「後家」と「未亡人」という対があり,男性のほうが「後家」を用いる傾向にあり,女性は「未亡人」を使用する傾向にあった.また地域で差があった同義語対としては,それほど大きな差がみられた同義語対はなかったが,挙げるとすれば「車庫」と「ガレージ」という対で,大阪では「ガレージ」が用いられる傾向にあり,東京では「車庫」が用いられる傾向にあった.

この先行研究は,同義語の使い分けの調査という点では本研究と類似している部分がある. しかし先行研究は,人手によるアンケート調査であり,機械学習により同義語の使い分けを自動で推定する本研究とは違った角度からのアプローチである.



平成25年2月19日