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活性伝搬

人間の記憶のメカニズムを近似したものに活性伝搬モデルというものがある. 活性伝搬は,エッジで結ばれたネットワーク構造において,活性を伝搬させ,その活性度の変化を調べることでネットワークのノードの重要度を計るという考えである.

活性伝搬では,社会構造モデルの各ノードが活性値を,そのノードに連結している他のノードに伝搬させる. 伝搬した際の各ノードの活性値の変化によって考察を行う. 本研究での活性伝搬は,式3.4により行う.

$\displaystyle \displaystyle A(t) = C + ((1 - \gamma)I + \alpha R(t))A(t - 1)$ (3.4)

ここで,$ t$ はモデルを活性させる活性回数であり, $ A(t)$ は活性回数tのときの各ノードの活性値を表すベクトル, $ C$ はモデルに外部から注入される刺激を表すベクトル, $ I$$ A(t - 1)$ の活性値を$ A(t)$ に伝搬させる単位行列, $ R(t)$ はネットワークの構造のエッジの重みに基づき表される伝搬行列である. $ R(t)$$ i$$ j$ 列の要素$ Rij$ は単語$ Wi$ と単語$ Wj$ の関連の強さを表している. また,$ \gamma$ は活性値の減衰率を表す減衰パラメータ,$ \alpha$ はネットワークが単語の活性値に及ぼす影響力の程度を表す伝搬パラメータである.

本研究では,社会構造モデルはそのモデルだけで完結しており,外部からの刺激はないものとする. よって式4.1の外部から注入される活性値を表すベクトル$ C$$ C =0$ とする. ネットワークが単語の活性値に及ぼす影響力の程度を表す伝搬パラメータ$ \alpha$ は,活性の伝搬はモデルの構造を表すベクトル$ R(t)$ によってのみ行われるため, $ \alpha = 1$ とする. また, 減衰率を表す減衰パラメータ$ \gamma$ は,適応する文書により異なるため, 減衰パラメータは $ 0<\gamma<1$ において比較実験を行う.

$\displaystyle \displaystyle A(t) = ((1 - \gamma)I + \alpha R(t))A(t - 1)$ (3.5)

よって,本研究の活性伝搬式には式3.5を用いることとする.

活性値が伝搬していく流れ表したものを図3.2に示す.

図において,単語aが活性した際に,その活性がエッジの重みにより単語a'に伝わることで単語a'が活性し, 単語a'が活性することで,単語jが活性している. このように,起点となる単語(社会構造モデルのキーワード)が刺激され,活性し,その活性値がエッジの重みに基づき分散され各単語に伝わる.

図: 活性伝搬の例
\fbox{
\includegraphics[width=135mm]{sotu2.eps}
}



平成25年2月21日