本研究の流れは以下の通りである.存在性をパターン型知識として収録した辞書を用いて,入力文を照合し,存在性情報を抽出する. この辞書からは,動詞の文字通りの解釈により,動詞ごとに事態の直前,最中,完了のタイミングで存在性が定まる. そして抽出した存在性情報を常識的な知識の解釈により,異なる存在性情報をより多く求め,信念の木というデータ構造(正確にはラティス構造)に追加する. 最後に作成した信念の木のルートからリーフへのパスを作成する.そして,どのパスが最も良いのかを解析するために,制定した条件に当てはまると得点が加算されるという方法で,全パスについて点数をつけて最も点数の高いパスを求める.
本研究では,「太郎が図書館で本を読む」,「太郎が本を借りる」,「太郎が家に帰る」という3文を用いて存在性情報を得るという実験を試みた. 入力した3文について上記の流れで存在性情報を抽出した結果,まず,データ構造の信念の木は,深さ6,ノード数24,アーク数102となり最終リーフは4つとなった. このとき作成されたパスは1024個となった. 次に,選択により得た最高得点は11点,最高得点に該当したパスは2つとなった. このパスの最終リーフは,人間が常識的に考える存在性と一致したので,存在性情報抽出は成功したといえる.