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背景

近年,体験型の観光が注目されている.体験型観光は,旅行者が旅行先で 見たり聞いたりするだけではなく,旅行者が五感を通じて行動したり,人々 と協同で行動したりするという観光である.たとえば,手打ち蕎麦体験や シーカヤック体験などがある.鳥取県では,昨年度,『農商工こらぼフォー ラム〜「農業」と「観光」の連携を考える〜』が開催された. 農商工こらぼフォーラムとは,都市住民のグリーンツー リズムや農業体験への関心が高まる中,観光農業という新しい視点を農業経営に加える ことで,生産物の販路拡大や収益向上に繋げる可能性を考えるための取り組みで, 「これからは農業と観光だ!」,「農業と観光の連携方法を考える」というテーマで講演 がされた.講演の中では,「いちご狩り」や「びわ狩り」,「ブルーベリー狩り」などが 話題に挙がっていた.

鳥取県の農業に関連した観光開発には発想支援技術を導入する余地がある. すなわち,上述のフォーラムでは,梨園・いちご園・ブルーベリー園などの 農業事業者や,旅行エージェントらが多くのアイデアを必要としていた. とりわけ,フルーツ狩りに注目してみると,フルーツ狩りそのものは,一時 間程度で終了することがあるため,フルーツ狩りだけでは,旅行としての ボリュームが不足すると予想される.より満足度の高い観光にするためには, フルーツ狩りの前後にも観光イベントを充実させる必要があるだろう. このように基本テーマとしてフルーツ狩りを想定すると,そのテーマに関連 する体験的な行動を,観光事例から分析する必要があり,そうした 分析を支援する情報処理技術に期待が寄せられるだろう.

ここで,観光事例としては,旅日記の書かれたブログ記事が挙げられる. 旅日記のブログには個人の体験談や旅行の感想などが多々記述されており,旅行者の 行動分析の対象となっている.しかし,行動分析を行なう際,体験談と感想以外の記述は ノイズとなってしまうため不必要である.そのため,ブログから体験情報のみを取り出 すことができれば,行動分析が容易になる.

先行研究によると,観光開発の発想支援としてブログ文の自動抽出の方法が示されている[1].しかし,その方法では, 行動以外の情報を参照して観光地の分析を行っているため,本研究で焦点をあてている分析とは異なる. 本研究では,行動の情報を得ること,その種類の把握,および,基本となるテーマとの前後関係を分析したい. そこで本研究では,まず,体験表現の抽出技術を用いることにする.そして,類似行動を分類するため, クラスタリング手法を導入する.さらに,クラスタの内容を概観するために,キーワード抽出手法も導入する.



平成24年3月13日