内山らは自動要約のために各種重要度を用いた手法を比較している. これらの手法には,本文の先頭数文を抽出する方法,単語の重要度 の総和にもとづく方法などがあるが,特にタイトルとの類似度にもとづく 方法が高精度であり,共起関係を利用した類似度が要約に有効であるとしている.
また村田らは情報検索の研究において確率型手法の一つであるRobertsonの2-ポアソンモデルに 位置情報を補強項として追加する手法を試みている.検索キーワードをもとに,この位置情報を用いて, 記事中での検索キーワードの出現位置がタイトルにあれば文書のスコアに加点する処理をし, この方法により情報検索の精度が向上したとしている.
以上の2つの研究に共通することは,タイトルの情報を利用して,それぞれ要約,情報検索の精度を向上している 点である.よって本研究でもタイトルの単語に着目し,タイトルに出現した単語を重要単語と定義して,その重要単語を本文中で強調表示 することによる読書速度の向上を目指した読書支援を提供した.
本研究の分析・考察として毎日新聞記事45件中10件の割合で本手法が有効であるとした分類を行った. 分類の結果は「A.ある事柄に関する詳細内容の把握」,「B.ある事柄に関する詳細記述箇所の把握(ある事柄について詳細記述箇所の把握)」, 「C.複数の事柄について詳細記述箇所の把握」,また「D.タイトルの(重要)単語の補完」となり,それぞれ6件,1件,1件,2件となった.
そして評価実験により本技術による重要単語出現箇所の把握速度向上を確認した. しかし,上述の分類にもとづく評価実験では本手法の有効性を示せず,どのような種類のテキストでも本手法が 有効であるとは確認できなかった.
今後の課題としては,重要単語出現箇所の把握速度向上が実際の読書支援に直接的につながるかを確認する 評価実験への発展,また,より読者に役立つ支援として特定の重要単語が集中的に出現している段落に対して, その重要単語について記載している段落であることを意味するタグを付与することが考えられる.