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はじめに

文型パターンを用いた言語表現の解析において,パターンの網羅性を高めるため に,パターンで使用される格助詞や様相表現に自由度を持たせる必要がある [1].とりわけ,受動態と使役への対策には格助詞の変形が伴うため, 単なる過去形や推量の表現に対応するよりも対策が複雑である.

ここで,日本語の単文についての代表的な文型パターン辞書として日本語語彙大 系が挙げられる[2].これは多段翻訳方式において日本語の命題表現をカ バーするためのものであり,原則としてパターンは能動態で記述されている. そのため,受動態の文に直接的には対応しておらず,パターン外の処理において対処 する必要がある.ところが,受動態に対処する方法は,[2]において具体 的に示されておらず,この辞書の利用者が各自で対処しなければならないという 問題がある.

受動文を結合価パターンと適合させる方法として,受動文の格助詞に対応した結 合価パターンを用意する方法と,パターン照合の際に入力文を書き換えて結合価 パターンの格助詞と対応させる方法の2つがある.

ここで,寺村の考察[3]を参照すると,『日本語において,格の移動に より能動文と受動文が対応する以上,一定の規則で表すことのできる変化である が,動詞の性質や名詞の性質によって規則の適用される範囲は限定的である』と 述べている.この考察は,動詞ごとに格助詞変化があるのだが,ある程度の規則 性があると解釈できる.つまり,動詞ごとに受動態のパターンを用意するべきで あるが,その多くは規則的に能動態のパターンから作成できるかもしれないとい える.そこで,本研究では,受動文の格助詞に対応した結合価パターンを能動態の パターンごとに作成するという前者の方法を試みる.



平成22年2月11日