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概要

日本語の単文の解析に日本語語彙大系の結合価パターンが使用されて いる.このパターンは命題表現をカバーするためのものであり,基本的には能動 態で定義されている.そのため,受動態や使役などの構文に対する格助詞の変化 には対応していないという問題がある.そこで,本研究では,日本語語彙大系にお ける結合価パターンを能動態から受動態へと変換する方法を示す.

寺村によると,日本語では能動態から受動態へと変換する際,動詞ごとに助詞の 変化内容が異なるが,ある程度の規則性があると言われている. そこで,大局的に能動態から受動態へと変換する規則を日本語語彙大系の結合価 パターンに適用して受動態のパターンを作成し,局所的に動詞ごとの差異を吸収す るためにパターンを修正するという方針でこの問題に取り組む.

本研究ではまず,寺村・庭により示された変換規則9件を適用して,11,310件の 結合価パターンを受動態のパターンに変換した.次に,寺村が考察した受動態の 例文に対して受動パターンで意味解析を行った.その結果,変換規則に助詞の不 足があったため,変換規則に改良を加え受動パターンを大局的に作り直した.

評価実験において,受動パターンの網羅性を検証するため,学習辞書などで使用 された単文の受動文に対して受動パターンで意味解析を行った.結果は,受動パ ターンのカバー率は約5割となった.誤り分析によると,動作主,対象物,ある いは手段を表すための多様な格助詞を網羅するという問題,および,能動態では 必須ではなくとも受動態では必須となる格要素を追加するという問題があるとわ かった.



平成22年2月11日