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はじめに

言語の意味理解の一つとして,言語表現から書き手や話者,登場人物の情緒を推 定する技術に期待されている.情緒を推定する技術は,テキストマイニ ングへの応用に可能性があると考えられている.例えば,インターネット上の掲示板やブ ログなどに蓄積されたテキストデータから情緒を推定することで,商品開発や社 会事情に対する大衆の気持ちを知るといったことが挙げられる.

情緒を推定の手法には,パターン辞書を用いる手法[1]や機械学習を用いる手法[2]がある. これらによると,テキストに例えば「嬉しい」など直接的に情緒が表現されなく ても, 情緒生起の原因(本論では情緒生起原因と呼ぶ)を根拠として情緒推定が行われる.パターン辞書を用いる手法で は,情緒生起の原因と語義の関係を定める基準をパターン辞書に設けることで, 入力文から照合された日本語パターンから情緒を推定することができる.また, 機械学習を用いた手法では,あらかじめ人の感情生起に関する用例文を原因表現 と共にコーパスとして蓄えておき,解析の際,入力文から原因を検出することで,感 情を解析する.

情緒推定技術を高める上で,情緒生起原因を表す言語表現の収集は基礎的で重要 な課題である.情緒生起原因によって,情緒推定における精度の向上が左右され る.パターン辞書に情緒生起の原因と語義の関係を定める方法では,その関係を 示す定義を増加させることで精度が向上する傾向がある.入力文に対する 定義設計が確立しているならば,人が感情を認識するメカニズムに近い情緒推 定が行えると考えられる.しかし,言語知識を全て辞書に加えることはコストの 面で非効率である短所がある.一方,機械学習 による情緒推定は,用例文を増加することで精度が増加する.機械的に言語知識 を加えることが可能であるので効率的だが,膨張した知識をコーパスから読み込 むことで,情緒推定による実行時間がかかってしまう短所がある. 情緒生起原因の形式には,上記に挙げたように様々であるが,いずれもあら ゆるテキストに対して情緒を推定するためにも言語資源の確保が必要で ある.収集した言語資源を分析することによって,言語の意味理解に関する見解 が生まれ,新たな情緒推定の手法を見い出せると考える.

そこで本研究では,過去の機械的な手法を用いて,情緒生起原因を収集すること を試みる.ここで,情緒生起原因は,名詞と動詞の「2つ組」に着目している.



平成24年3月20日