これに対し,情緒推定へのアプローチの一つとして,「情緒生起の原因 に着目した手法」に田中らは着目した[1].この手法は,情緒属性付 き結合価パターン辞書を構築することで,用言の語義から情緒の生起原因を明記 した特徴(情緒原因)を解析し,情緒を推定する手法である.ところが,この辞書では,格要素に描かれていない人物の情緒がカバーできない という問題がある.例えば,「が壊れる」では,人物が描かれていないの で,情緒推定を行えない. そこで本研究では,格要素の物や事象(オブジェクト)に関わる者を情緒主と想定 して情緒推定を行なう方法を提案するとともに,知識ベースの構成を示す.
本論文の構成は以下の通りである.第2章では,これまでの使用していた情緒属
性付き結合価パターン辞書について述べ,情緒推定に関する基礎的な知識につい
て説明する.第3章では,新しい情緒推定方法として人物
補完型の情緒推定という手法を模索し,その原理について述べる.第4章では,
提案した人物補完型情緒推定を実現させるための知識ベースを示す.
第5
章では本知識ベースを運用した情緒推定システムの実装を示す.そして第6章
では,実装したシステムの動作確認を行ない,第7章で考察と今後の課題を述べる.