田中らによる情緒生起情報を付与したパターン辞書がある[4].田中 らは,日本語語彙大系[7]の結合価パターン14,819個に対して,7,320個 の情緒属性(「前提条件」,「情緒主」,「情緒対象」,「原因」,「情緒名」) を付与した.ここで,情緒名は,8つの基本情緒(「喜び」,「悲しみ」,「好 ましい」,「嫌だ」,「驚き」,「期待」,「恐れ」,「怒り」)としている. これにより,情緒生起原因による情緒推定の可能性を示した.
黒住らによって,情緒状態と直結した情緒反応を表す用言の結合価パターン辞書 が作成されている[5].黒住らの辞書は,日本語語彙大系 [7]における「感情動作」および「感情状態」カテゴリに属する結合価パ ターン1,615件の内,情緒を明示するもの1,030件と情緒による反応のもの100件に 情緒属性(「情緒主」,「情緒対象」,「情緒名」)の付与を行っている.情緒 名に関しては,8つの情緒に「なし」を加えた9種類としている.
徳久は,言語表現から話者の情緒を機械的に推定する手法を提案した [6].情緒推定手法については,情緒原因,情緒状態,および,情 緒表出についての表現をパターン辞書で解析している.さらに,機械に対する入 力文とパターンの照合の際に複数のパターンが適合する曖昧性の問題に対して, ヒューリスティクスを用いることで解消している.