next up previous contents
次へ: 関連研究 上へ: syuuron 戻る: 表一覧   目次

はじめに

近年,Web上で個人の情報発信が容易となるに伴い,ブログや掲示板から世間の 関心事や口コミ情報を解析する技術が期待されている.すなわち,Webテキスト から「喜び」や「怒り」といった情緒を推定する技術が必要となる.先行研究 において目良ら[1]は語句の好感度に注目し,対話に対する情緒推定を 行っている.田中[2]や黒住[3]は情緒属性付き結合価 パターン辞書を用いて情緒生起原因,情緒状態,反応表現を表す用言から情緒 を推定している.用言を手がかりとするため,文献 [1][2][3]では,用言が省略されていたり,複 数の意味解釈が可能な表現には対応できなかった.しかし仮に,表現が重文複 文として存在していれば,接続表現と他の節の情報を考慮することで推定が可 能になる可能性がある.

具体例で示すと,「喉越しが……」といった用言が省略されている表現,「バ イクが当たった」といった複数の意味解釈が可能な表現(この例では物理的に 当たった場合と,懸賞で当たった場合の二通りが考えうる)では情緒が正確に 推定できない.しかし,「このジュース,おいしいんだけど喉越しが……」や 「バイクが当たったので嬉しい」といった表現で存在していれば,接続表現と 他の節の情報から情緒が推定できるようになる.

このような情緒推定を実現するためには情緒に関する接続表現の性質を分析する必 要がある.ところが,先行研究[4][5]では数種類の 接続表現において情緒極性の反転という性質を利用するに留まっていた.

そこで,本研究では,情緒推定に有用な接続表現が存在するか分析し,存在す るならば接続表現の情緒に関する知識を知識ベースとしてまとめることを目的 とする.その方法として,まず,日本語文型辞典[6]から接続表現を収 集し,語義を手がかりに情緒に関連するか分析する.次に,ブログデータを用 いて事例分析を行う.語義分析と事例分析の結果より,情緒推定に有用かどう かを判断し,有用な接続表現を知識ベースとして構築する.

本論文の構成は以下の通りである.第2章では関連研究について述べる.第3章 では本研究で扱う接続表現および情緒,接続表現の情緒性変換について定義す る,第4章で語義分析について,第5章で事例分析についてそれぞれ述べる.第6 章では知識ベース構築について記述する.第7章ではまとめを述べる.



Nakamiti 平成22年2月13日