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はじめに

言語の意味理解の1つとして,文章から話者や登場人物の情緒を推定する技術の 実現が期待されている.情緒推定の手がかりとして,従属節と主節をつなぐ接続 表現が役立つ可能性がある.

たとえば接続表現「〜のに〜」を含む文では,従属節で行った努力に対して,主 節では努力に相応した結果が得られなかったという事態が考えられる.ゆえに接 続表現「のに」は負の情緒と共起しやすいといえる.

接続表現に着目した先行研究として横森[1]や那須川[2]ら がある.先行研究[1],[2]では,文脈上で情緒の正負 が反転する際に,伴って用いられる接続表現が存在すると示唆している.しかし, どのような接続表現が伴うときに情緒の正負が反転するのかに関しては,「けど」 や「のに」などいくつかの接続表現を例示するにとどまっている.

そこで本研究では,一文内で使うことのできる接続表現を対象に,情緒との共起 に着目して接続表現の意味分類を行う.具体的には,先行研究や仮定から,情緒 属性として極性変換性と制限性という二つの属性を定め,接続表現が網羅的に収 録されている日本語文型辞典より接続表現を抽出した.接続表現を含む文を5文 ずつブログより収集し,それらの文に対して情緒推定を行い,各接続表現の属性 値を定めた.結果,情緒推定に利用できそうな接続表現として,「特定・反転」 の7件,「特定・保持」の5件,「特定・不問」の41件,「不特定・反転」の1件, 「不特定・保持」の3件,計57件が抽出できた.

本論文の構成は以下の通りである.第2章で研究の背景を述べ,第3章で情緒に関 連する接続表現の意味分類について述べる.第4章で接続表現と情緒の共起分析 を行う.第5章で分類結果を示し,第6章で考察する.最後に第7章で今後の課題に ついて述べ本研究をまとめる.



平成20年6月3日