計算機が話者や書 き手,登場人物の情緒を推定する手法としては(i)「情緒の明示的な表現に着目した 手法」と(ii)「情緒生起の原因に着目した手法」がある. 例えば,(i)では「彼が彼女を愛する」や「太郎が喜ぶ」という文において,情緒の明示的な表現である「愛する」や「喜 ぶ」といった表現を手掛かりとして情緒を推定している.一方,(ii)では,「太 郎が大学に合格する」や「太郎は魚をたくさん釣った」という文において,「合 格する」や「釣った」という情緒を引き起こす原因を表す用言を手掛かりとして 情緒を推定している.
本研究では(ii)の手法に ついて取り上げる.(ii)の手法に関して,先行研究[3][4]では,情緒生 起の原因を表す用言を手掛かりに情緒原因を解析することで,書き手や登場人物 の情緒の推定を試みた.
情緒原因の解析には意味解析を行う必要があり,結合価 パターンの意味解析能力を利用することで対処した.具体的には,あらかじめ結 合価パターン辞書に「情緒名」や「情緒原因」などの情緒属性を与えておく.こ うすることで,解析対象文と結合価パターンの照合を行った際に,解析対象文中 に情緒原因が含まれることを解析できると同時に,その解析した情緒原因から情 緒推定が行えると述べている.