表9より正解率が81.1%と向上したことがわかる.正解率向上の要因を考えると IPS法は,カバー率の低さからあまり影響がないと考えられる.そのため, CBS法が大きく正解率向上に影響していると考えられる.CBS法は,形 式名詞,数詞,時詞の特徴に着目した解析方法となっている.このうち,形 式名詞では,形式名詞の自立性の低さに着目することで,形式名詞が名詞A に来ても,名詞Bに来ても「A係り」と判定されるようになっている.これは デフォルト規則と同じことから,形式名詞による 正解率の向上は考えられない.そのため,正解率が向上したのは数詞,時詞に着 目することで,少数である「B係り」を判定できたことが大きな要因であると考えら れる.この結果より,信頼度の極端に低い解析方法であるVCC法などは,統合方 式に加えない方がよいと考えられる.
次に,cabochaと比較した実験では,cabochaの正解率よりも9%向上して82%の 結果となった.このことから,CBS法とIPS法による統合方 式は,「V+AのB」型名詞句の係り先解析においては,一般に使用されている係り 先解析器よりも高い精度を持っていることがわかる.