「国連防衛軍に所属するチェコ憲兵部隊」は,「あるチェコ憲兵 部隊」が「国連防衛軍に所属している」ということが想像できる.「国連防衛 軍に所属するツェフ大佐」も,「ツェフ大佐」が「国連防衛軍に所属している」 ということが想像できる.このことから,これは「AB係り」と見ることが出来 る.
さらに本研究でも検査したところ,係り先が間違っていると思われるものが見ら
れた.以下にその例を示す.
例6では,連体修飾節Vが名詞Aに係ると考えると「規制してきた最大」となり, 意味的に不自然で想像しにくい.名詞Bに係ると考えると「規制してきた理由」 となり「ある理由」から「なにかを規制してきた」ことが想像できる.よって 係り先は名詞Bの「理由」である.しかし京大コーパスでは,係り先を名詞Aの 「最大」にしている.
次に例7では,連体修飾節Vが名詞Aに係ると考えると「事件捜査にかかわる 公式」となり,意味的に不自然で想像しにくい.名詞Bに係ると考えると「事 件捜査にかかわる情報」となり,「ある情報」が「事件・捜査にかかわる」も のであることが想像できる.よって係り先は名詞Bの「情報」となるが,これ も京大コーパスでは,係り先を名詞Aの「公式」にしている.
このように,京大コーパスに,あらかじめ付与されている係
り先は必ずしも正しいものとはなっていない.