従来から言語の意味理解の1つとして,発話された文から話者や登場人物の情緒 を推定する技術の実現が期待されている.
これに対し,既に文中の副詞や形容詞などの単語に注目した推定 [1]や,動詞の深層格関係(各要素間の関係および各要素への好感度の関係) に注目した推定[2]が提案されている. 他には,表現の構造にも着目した推定方法がある. 言語表現から話し手の情緒を推定する手がかりとして,「情緒の生じる原因を表 す表現」,「情緒状態を表す表現」(直接表現と呼ぶ),「情緒的な反応を表す表現」があげられる. 情緒の生じる原因を表す表現については,情緒生起に関する情報を持つ表層表現 の辞書が必要となるが,この辞書は,結合価パターンへの情緒生起情報の付与 [5]により,提案されている.
日本語語彙大系は,約1.4万件の用言が意味属性により分類されている.情緒状態を表す表現は,日本語語彙大系の「感情動作」および「感情状態」とい う意味属性に分類されているが,「情緒主」,「情緒対象」,「情緒の種類」に 関する情報(情緒属性と呼ぶ)までは解析できない. そこで,本研究では,感情動作および感情状態に属する結合価パターンに情緒属 性の付与を行う.今回対象とした用言は1615パターンであり,そのうち10 34パターンを直接表現と分類し,情緒属性を付与した.